[官能小説レビュー]

官能小説読みの視点で考える、BL小説『美しいこと』の恋愛とセックスで満たされる女の願望

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『美しいこと(上)』(蒼竜社)

■今回の作品
『美しいこと』(木原音瀬、蒼竜社)

 小説業界でも「ボーイズラブ」のジャンルが一般的になった。現在、電子書籍サイトのカテゴリに当然のように存在しており、書店でもライトノベルほか漫画なども多く見かける。

 対して女性同士が絡み合う「百合」も、おなじく一般的に愛されているジャンルではある。ただ、筆者が愛読している官能小説上では、やはり男性向けに書かれているものが多いため、「百合」行為というものは、女性の絡みを“男性が覗き見する”など、ほぼ必ず男性の視点が存在する。

 しかしBL小説にはそのような要素はなく、2人きりで恋愛や行為を楽しむ世界が描かれる場合がほとんどのように思う。BL初心者の筆者は、女性の存在がなく、2人きりで行為を楽しむというBLの世界には、女性読者のどんな願望が秘められているのかと興味がわいた。

 ごく自然に、人が人を愛する延長上で描かれるBLの世界観――今回は、普段官能小説を読む筆者から見た、BLという世界、そして世の女性たちが長年魅了され続けている理由を紐解いてみたい。

 BL世界の神とも言われている作家・木原音瀬氏。今回ご紹介する『美しいこと』(蒼竜社)は舞台化もされた人気作品である。

 主人公は、ごく一般的な企業に勤める松岡。日々蓄積する仕事の鬱憤を女装という形で晴らすことで快感を得ている。女性的な顔立ちの松岡が化粧をして女性の服を身に付けると、ときびりの美女に変貌する。普段は男性である松岡は、“女”として見られ、声を掛けられることに悦びを感じていた。

 そんな中、松岡はあるトラブルに巻き込まれてしまう。いつものように声を掛けられた男について行ったところ、松岡自身が男であることがバレてしまうのだ。貴重品全てが入ったバッグを置いて男の部屋から逃げた松岡は、途方に暮れていた。

 靴も履かずにふらふらと街の片隅で腰を下ろしていたときに手を差し伸べてくれたのは、同じ会社に勤める寛末。経理課で働く彼は温厚でおっとりとしていて、仕事が遅い。同期から言わせると、目の上のタンコブのような存在だと聞かされていた。
 
 その後、寛末は女装した松岡に強く惹かれる。彼の気持ちを知った松岡は、口をきくことができない“女”として寛末と関係を持つようになる。

百田尚樹よ、これが純愛だ

しぃちゃん

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