[官能小説レビュー]

ツンデレ上司と恋愛に不慣れな部下――韓流官能小説が見せる“おとぎ話”としてのセックス

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『恋のパフューム』(三交社)

■今回の官能小説
『恋のパフューム』(チョン・ジミン著、いしいのりえ翻訳/三交社)

 少なからず“恋愛感情”というものを誰かに抱いたことのある人は多いが、育った環境によってその感情表現は大きく異なるものである。ひと昔前とは比べものにならないほど、日本人の恋人同士の愛情表現は大胆に、欧米化してきたとはいえ、その裏では“絶食系男子”なる言葉まで生まれたように、生身の女性にまったく興味を示さない若者もいるようである。よくも悪くも、不安定な現代の日本情勢を表しているようにも感じる。

 さて、お隣の韓国はどうだろう? 韓国の若者には、さまざまな障壁が待ち構えている。例えば、熾烈を極める受験戦争、徴兵がそれに当たる。これらの障壁によって恋愛がいっそう燃え上がることも想像に難くないだけに、若者たちは、もしかしたら私たちが想像するよりも情熱的な恋愛観の持ち主なのではないだろうか。日本でも大ブームになった、韓国ドラマ特有の“ロマンティックなラブストーリー”もこうした背景から生まれているのかもしれない。

 今回ご紹介する『恋のパフューム』(三交社)の作者は韓国人。2015年春に立ち上げられたばかりの韓国ロマンス文庫レーベル「Kロマンス」から刊行された作品だ。韓国女性が描く恋愛模様の数々が、ときに静かに、ときに激しくつづられている。

 舞台は、とある化粧品会社。この会社で調香師として働くメガネ女子のジウンが主人公だ。仕事も順調、優しい恋人を持ち、充実した日々を送っているジウンだが、彼女は1つの悩みを抱えていた。それは、交際1年にもなるという恋人といまだに肉体関係がないということ。

 物語のもう1人の主人公は、ジウンの上司であるインハ。彫刻のように整った容姿と腹に響く低い声を持つ、冷静沈着、完璧主義な男性である。しかしそんな彼も、ジウンが放つ青い桃のような香りにより、彼女の前で動揺を隠せないでいた。

 物語はジウンとインハの視点で交互に語られる。恋人と結ばれたい半面、インハの付ける香水の香りと魅力に翻弄され、ジレンマに悩むジウンと、ジウンに魅了されながらも行動に移せずにいるインハ。互いが放つ香りによって惹かれ合う2人の関係は、ひとたび上司と部下という関係性を超えると、周囲も寄せ付けないほどぴったりと寄り添い、情熱的に燃え上がってゆく。

 “上司と部下”“ツンデレ上司と恋愛に不慣れな女性”――女性があこがれる王道のロマンティックなシチュエーションがたっぷりと盛り込まれている本作は、韓国ドラマにも通ずるものがあるのではないだろうか。恋愛感情を持ったことのないインハが、初めて愛した女性・ジウンを抱くというセックスシーンは、その緻密な描写が見所だ。ジウンのつま先から頭のてっぺんまで丁寧に愛し、性欲を開放させてく様は、思わずうっとりしてしまう。

 セックスシーンの盛り込まれた官能小説であるにもかかわらず、本作はむしろ“おとぎ話”のように思う。普段のセックスの延長線上ではなく、まったくの非日常のファンタジーの世界を楽しめるのが韓流官能小説なのだ。最近はやりの“キス動画”を見るように、自己逃避して、可愛らしいカップルから恋愛のエッセンスを吸収するのにぴったりの作品である。
(いしいのりえ)

カラダが千切れそうになる読後感……

しぃちゃん

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