『なんかおもしろいマンガ』あります ~女子マンガ月報~【3月】

『マリーマリーマリー』が描く、“足りない”“不完全”でも幸せな2人による幸福論

女子マンガ研究家の小田真琴です。太洋社の「コミック発売予定一覧」によりますと、たとえば2015年2月には978点ものマンガが刊行されています。その中から一般読者が「なんかおもしろいマンガ」を探し当てるのは至難のワザ。この記事があなたの「なんかおもしろいマンガ」探しの一助になれば幸いであります。後編は単行本。2月のオススメと3月の注目作をご紹介します。

(前編はこちら)

【2月のオススメ】幸福論としての勝田文『マリーマリーマリー』

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マリーマリーマリー』1(集英社)

 色っぽいダメ男を描かせたら日本一! の勝田文先生の最新作『マリーマリーマリー』1(集英社)は、勝田先生の最高傑作になりそうな雰囲気が漂う、幸福感とグルーヴ感にあふれたとても愉快な作品です。

 鍼灸師のリタは、往診で訪れたライブハウスの片隅で、壁に向かって独り「ワンダ~♪」と歌う不審な男を見かけます。彼こそが一部ではカリスマ視されているブルースバンドのギタリスト・森田。リタにひと目惚れした森田は唐突にプロポーズしますが、戸惑いながらもリタは、森田の健やかさと純粋さにほだされて結婚を決意。お金はあまりないけれど、楽しい2人の結婚生活が始まります。

 いつだって勝田先生は「完璧な幸せ」を志向しません。その作品で描かれる「幸せ」は、どこかいびつだったり、足りなかったり、不完全な代物であるのですが、でも彼女ら/彼らはとっても幸せそうであります。例えばそれはリタの愛車であるクラシック・ミニに象徴されることでしょう。旧車で外車でメンテナンスは大変で、エンジン音は「ブボボボボ」だし、乗り心地もいまいちだけれど、その佇まいを愛するリタは、この車を選んだことに後悔などしていません。あるいはドタバタとした即席結婚式の真っ最中、「おめでとう!」の嵐の中でリタはこう思います。「――なんかよくわかんないけど」「ありがとう!」。その幸せそうな表情といったら。

 森田とリタは、実は似た者同士なのです。他人の価値観に振り回されることなく、自分が真に好きなものを愛し、したいと願ったことをします。時折登場する森田のおいしそうな手料理を食べて、リタは「あ、おいし…」と独りごち、そして気づきました。「あれ…」「この人…」「今自分が何を食べたいのかちゃんとわかってる…? 自分の体にしたがって生きてる…」「どんなときも心と体のしたいことだけをする…」「だから究極にストレスがない!!」「だから健やか!?」。鍼灸師であるリタの志向するところも実は同じ。

 酉の市で熊手を買ってきたリタに森田はこう言います。「リタはそういう昔ながらの季節もんとか好きだな」。リタはこう答えます。「東洋医学って自然とか季節の中でうまく暮らすことが大事だから」。流れに逆らわず、時には自然に身を任せ、自分や他者と折り合いをつけること。幸せになるためのコツは、実は自分自身の中にこそあります。本作は非常に汎用性の高い幸福論でもあるのです。

 かつての森田のバンド仲間で、今はスターとなった二郎は、森田のステージを眺めながらつぶやきます。「結婚式もそうだけど、人の幸せを見るのって…幸せな気分になれることのはずだよ」「たとえ自分じゃなくても、誰かが誰かのことを思っているってことに、みんななぜか心を動かされる」「それでみんなもそれぞれ誰かのことを思って、それがめぐりめぐっていつか…」。このマンガがなぜこんなにも楽しいのかといえば、森田やリタのその時々の幸せが、十全に描かれているからに他なりません。

 一方、ある男の底抜けの不幸を描きながらも、滅法笑えるのがカレー沢薫先生の『やわらかい。 課長 起田総司』1(講談社)です。主人公の起田は同期の出世頭でしかもイケメン。誰もが羨むそのスペックの裏で、実は彼には重大な悩みがありました。それはED。起田を狙って迫り来る女たち。しかしピクリともしない彼のナニ。本来ならば、うはうはのハーレム的な状況であるはずが、今の起田にとっては生き地獄となります。

 高速で繰り出される下ネタの連打は、もはや下ネタが下ネタであることを忘れさせるほど。むしろある種の品格すら感じさせます。性別にかかわらずオススメしたいギャグ作品です。

 2月はほかにも都陽子先生の新作『地下アイドル、職場の男にバレまして』(祥伝社)や、『千年万年りんごの子』(講談社)の田中相先生によるバレーボールマンガ『その娘、武蔵』1(講談社)、雁須磨子先生が国語の教科書を題材とした連作集『こくごの時間』(秋田書店)、完結巻となるやまもり三香先生『ひるなかの流星』12(集英社)などが印象的でした。こちらもぜひ。

花粉シーズンこそマンガよね

しぃちゃん

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