『なんかおもしろいマンガ』あります ~女子マンガ月報~【7月】前編

「食」を打ち出すマンガにご用心! グルメマンガ旋風、本質は『孤食ロボット』にアリ!

女子マンガ研究家の小田真琴です。太洋社の「コミック発売予定一覧」によりますと、たとえば2014年6月には982点ものマンガが刊行されています。その中から一般読者が「なんかおもしろいマンガ」を探し当てるのは至難のワザ。この記事があなたの「なんかおもしろいマンガ」探しの一助になれば幸いであります。まずは6月の話題と女性向けマンガ各誌をチェックいたしましょう。

【話題】企画物系グルメマンガにご用心!

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(左)『孤食ロボット』(集英社) (右)『白い街の夜たち』(エンターブレイン)

 リヴァイ兵長が表紙の「FRaU」(講談社)8月号はもうご覧になられたでしょうか。毎年恒例の「フラウマンガ大賞」で今年もまたベラベラとしゃべっておりますので、ご興味あればぜひぜひ。ちなみに付録は大人気リヴァイ兵長のクリアファイルです。すでに完売してしまった書店さんもあるとかないとか……お求めはお早めに(宣伝)!

 こちらの選考会でもちらっと話題にのぼったのが、昨今のグルメマンガブームに関してでありました。現在のブームはかつての『美味しんぼ』(小学館)のように「最高においしいもの」を志向するわけではなく、多くはあくまでも手の届く範囲の日常的なB級グルメを題材としているのが特徴で、その嚆矢はおそらく『孤独のグルメ』(扶桑社)や『花のズボラ飯』(秋田書店)などの久住昌之先生の作品群でありましょう(余談ですがもしこの2作がお好きで『かっこいいスキヤキ』(扶桑社)をお読みでない方がいらっしゃいましたらぜひお読みください。泉昌之名義の30年以上前の作品ですが、圧倒的にオリジナルで最高におもしろいB級グルメマンガの歴史的名作です)。

 ところが最近どうもきな臭い作品が増えてまいりました。「きな臭い」というのは具体的には「企画物くさい」とでも言い換えられましょうか。つまり打ち合わせの場で「今はグルメマンガが熱いんすよ! グルメマンガ描きましょうよ!」なんて一席ぶってる編集者の姿が目に浮かぶような作品のことです。

 いや企画物だろうがなんだろうが、おもしろければいいんですよ? でもおもしろくない。肝心の食べものがまずそうだったり、そもそもその食べものの文化的コンテクストを理解していなかったり、無理矢理に食の要素をくっつけただけだったり……。先述の選考会で福田里香先輩がおっしゃっていたように、マンガにおいて「食べものは描こうとするものではなく描いてしまうもの」なのだと思います。「それが作家性である」ともおっしゃっていました。食は性とともに人間の本質に関わる欲望ですからね。ことさらに食をわかりやすいフックとして売り出されているマンガには、くれぐれもご注意ください、というお話でした。

 しかし一方では、食の本質を見事に撃ち抜く素晴らしいマンガも多数登場しております。岩岡ヒサエ先生の新作『孤食ロボット』(集英社)もその1つ。本作が描くのは「食べるもの」のみならず、「食べるシチュエーション」です。誰と食べるのか、どこで食べるのか。そこから広がる人間関係の網、生まれる関係性の機微。掲載誌の「ジャンプ改」は10月売りを以って休刊してしまうようですが、どうか長く描き続けてほしい作品です。

 おざわゆき先生の『あとかたの街』(講談社)は戦中の名古屋が舞台。少女の目を通じて、戦争がいかに「生活」を破壊してゆくのかを描きます。そこで重要な役割を果たすのが食。日に日に貧しくなるみそ汁の具、一家の主しか食べられなかった卵焼きのありがたみ。戦争とは最前線のドンパチばかりではないことを思い知らされます。トルコを愛する市川ラク先生の初長編作品『白い街の夜たち』(エンターブレイン)を読めば、トルコ料理が食べたくなること請け合いです。服飾系の専門学校生、文子がふと足を踏み込んだトルコ料理店。そこで知るベリーダンスやトルコのこと、そしてさまざまな人生……。作者が心底トルコの文化と食を愛しているからこその説得力が画面から溢れ出してくる、なんとも愛おしい作品です。

能書きばっかじゃ食に欲情できないよ~

しぃちゃん

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