[官能小説レビュー]

男に選ばれることに疲弊した女へ、元AV女優が送る『人妻、洗います。』

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『人妻、洗います。』/双葉文庫

■今回の官能小説
『人妻、洗います。』川奈まり子(双葉文庫)

 女は男に選ばれるもの――果たしてそうだろうか?

 男が好みそうな服をまとい、髪の毛は柔らかに巻いて、清楚さを際立たせ、無言で男を誘う……そんな記号化された「モテ」の定義に躍らされている女性も少なくない。しかし、そんな定義を勝手に作り出したのも、もしかしたら私たち女なのかもしれない。実態のない「男目線」に振り回され続け、結果として、男に選ばれればラッキーだが、一方で選ばれなかった女たちは、どうするのか? さらに、今は、元気のない男たちがはびこる時代である。ぼけっと待っているだけでは、なかなか男は捕まえてくれない。目の前を何人もの男が通り過ぎてゆくたびに、次第に自信を喪失してゆく女たち。卑屈になり、殻にこもって「どうせ、私なんて選ばれない」が口癖になってしまう。

 しかし、男から選ばれないのならば、自ら男を選べばいいのではないだろうか。かつて、AV女優として人気を博した川奈まり子の官能小説『人妻、洗います。』(双葉文庫)には、そんな女性としての自信を失った人妻たちの成長が描かれている。

 主人公は、大学生の清水洋一。両親がクリーニング店を営んでいることもあり、アルバイト情報サイトを検索して、とあるクリーニング店でのアルバイトに応募した。さっそく面接先のクリーニング店に向かうと、テナントビルの五階に位置するそのオフィスは、白い大理石が敷き詰められ、薔薇が飾られている瀟洒な空間……。そして社長の万里子は、クリーニング店の名前「マドンナクリーニング」の名に相応しい、聖母のように美しくて柔らかに包み込むような女性だった。

 万里子の美貌に躊躇していると、部屋の鍵を閉められ、面接が始まった。そして万里子は、不思議なことを言い出した。「マドンナクリーニングは、お客さまの心を洗うことを目指している」。心と心をしっかりと交えて、お客さまの気持ちの汚れも取り除くことがマドンナクリーニングのモットー……心の汚れを落とすためには、“身体”を交わすことも辞さないということだ。

 うろたえる洋一に、万里子は「私を洗って」と誘う。童貞の洋一は、万里子にリードされながら万里子を“洗って”ゆく――あるまじき面接を無事に終え、見事マドンナクリーニングの「御用聞き」に合格した洋一は、さまざまな人妻たちを“洗う”ことになるのだ。

 クリーニングを依頼する人妻たちは、さまざまな心の汚れを抱えている。歳の離れた夫に長年浮気をされていたために、自分に自信を持てなくなってしまった、古風な顔立ちの仁美。セックスに消極的ながらも、夫との子作りセックスを控えた前日、自信をつけるために恥部を見てほしいとお願いするすみれ。洋一と対峙することで、人妻たちは再び女性としての自信を取り戻してゆくのだ。

 抱かれない主婦たちが長い間蓄積してきた心の垢を、セックスを介してそぎ落とす。しかし本書は、つかの間のセックスでは女の心の隙間は埋まらないことも示唆している。その隙間を埋めるためには、「自分には、愛される価値があるのだ」と気づかせなければいけない、と。真正面から対峙し、瞳も心も見つめ合いながら、ぽっかりと空いてしまった溝を少しずつ埋めてゆく――身体はもちろん、心が十分に潤んだ時、女はようやく自信を取り戻すことができるのである。

 女は、男に選ばれるものではない。例えそれが仕事だとしても、若くてかわいい男のコに丁寧に抱かれることを、女は自ら選ぶことができる。そして、時に女は、「男とセックスをすることで心の垢をそぎ落とす」というように、男を踏み台にしても良いのだ。選ばれるのではなく、選ぶことで、女は本来の自分の姿を思い返して、より美しく輝いてゆくのだ。「女は、強くたくましく、美しくなければ」本書はそう背中を押してくれているように思う。

たわしでガシガシはやーよ

しぃちゃん

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