[女性誌速攻レビュー]「Domani」12月号

「Domani」が提唱する地味美人は、欲望を禁じさせた社会の産物

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「Domani」2012年12月号(小学館)

 「いつも心に『寅さん』を!」「華麗なる貧乏で行こう!」「まちゃあきパンツ」……これまで「Domani」がうんうん唸りながら生み出し、世間がスルーしてきた言葉はいくつあったでしょう。そんな中、今月「Domani」意気揚々とぶつけてきたのは、「地味美人」。今月号の特集は「“派手キレイ”より“地味キレイ”の時代です」。そしてこの地味美人という言葉の裏には、社会に抑圧された欲望のカタチが見え隠れしたと実感した次第でございます。それでは早速中身にレッツラゴー!

<トピック>
◎会って5秒で決まる…! “地味美人”vs“派手美人”ってこういうことです!
◎バブラー上司&ゆとらー部下の取扱説明書
◎産む? 産まない? する? しない?

■「女」のハードルが高過ぎで、もはや棒高跳び状態!

 今月号で突如出てきた「地味美人」というのは、一体どんな人なのか。脚本家の中園ミホ氏、歌人の穂村弘氏、フォトグラファーの水田学氏、そして吉本新喜劇座長の小籔千豊氏らがそれぞれ語ってます。みなさん「地味美人」について語るはずが、どうしてもバブル時代を引きずっているような派手美人をdisりたいようで……。

「いつまでも外見だけにこだわり、そちらにばかり意識や時間を向けている女性もまだまだいて、それはそれでいいんですけど…、全身ブランドで固めて髪も一糸乱れずみたいな女性がそばにいると、周りの人は疲れてしまうかも…。だれもがウザい美人になんてなりたくないですよね(笑)?」(中園氏)
「地味美人…難しいテーマですけど、反対語を考えると派手ブスですか。それはやっぱりイヤですね(笑)」(穂村氏)
「女性は先細りの魅力で勝負してはダメ。幸せになりたいのなら、乳ではなく、おいしいご飯がつくれるとか、人に優しいとか、この先も変わらない女らしさでアピールしないと」(小籔氏)

 な~んかイヤな感じ。今の時代に、バブルを引きずっている女性を叩くのは安全だし、一種の「正義」じゃないですか。なぜなら、バブル世代はもう社会の真ん中にいないし、バブル女の特性と加齢によって生まれる「イタい」という事象がリンクしやすいから。そこをわかっていて、叩くというか、思う存分殴り倒してますよね。しかも一見「内面重視」と言ってるように見えて、「地味美人」と「美人」が付くように外見的な美しさは備えていることが前提なんですよ! 「内面磨き」を推奨し、日本に何十万人もの「押切もえ症候群」を産み出してきた女性誌が、とうとう「内面+美人」を打ち出してきましたよ! そんな価値観を集約したのが、水田氏のこの言葉。

「男に依存しない現代の女性たちが、奥ゆかしさを兼備したら最高だな~と思います」

 「バブル的な外見至上主義の派手な女になるな」「けれどダサいのは失格」「男に依存ぜずに自分の足で立て! でも控え目であれ!」と言いたいようなんですが、なんですかコレ。一言で表すと、人畜無害を目指せということですよ。地味な美人=他人に威圧感や外見的劣等感を覚えさせない、奥ゆかしさ=他人を1ミリも傷つけない。要は自分にとって不快にならない人を、理想モデルにしたいようです。こう考えると「地味美人」を推奨するのって、ものすごく自分勝手な同調圧力としか思えないのですが、みなさんはどう感じましたか?

向上意欲の行く先は?

 「美人であることはもちろん、内面を磨け」と言われた「Domani」読者はもうシャカリキに頑張ります! 「群れない、つるまない、その代わりに“地味美人”は定時に上がった後のアフターがすごいことになっているらしい! BOOK」という企画には、自分を磨きすぎて無くなっちゃいそうな女性がいっぱい登場しています。やれ社会人大学院で学んだり、月ヨガでポーズをとったり、阿波踊り踊ったり、サックス吹いたり、ハンモックカフェにいったり……えっ!? ハンモックカフェはただ単に茶飲んでるだけじゃねぇか!

 これだけ頑張っている内面磨きですが、先に登場した穂村氏に言わせると、「先の日本人女性は、強迫観念かと思うほど向上意欲が高いですね」とのこと。頑張ったら頑張ったで、「必死すぎ(笑)」と言われちゃうんだから、やってんらんねーよ!

「賢く」なったんじゃなく、「複雑」になった欲望

 前述の通り、「地味美人」という概念の反証材料となるのは、バブルを引きずってる先輩方。今月号には「バブラー上司&ゆとらー部下の取扱説明書」というページがあるので、まずは「Domani」世代(30代全般)がバブル世代(40代中盤~50代)の女性をどう見ているのか、探ってみましょう。バブル世代女性の特徴として挙がっているのが、「化粧が濃い」「カラオケではトレンディドラマの主題歌を唄う」「男には高身長、高学歴、高収入を求める」など、確かにバブルならではの価値観。

 ただ、「エネルギッシュでスケジュール表を埋めるのに必死」「あらゆる教室に通っている」のは、阿波踊り踊ったり、サックス吹いたり、ハンモックカフェで茶飲んで「自分を見つめ直しています」という人に言われたくないんじゃ……。「昔はちやほやされていたらしく、ブランド物が大好き」というのも、今月号の「これが究極の『地味美人』小物名品事典」にある、エルメスのストールやピアジェの腕時計を見たら同類ですし、「おごってもらうことに命を燃やさないで!」というバブル世代への辛辣なご意見も、「Domani」読者による緊急座談会「私たちが“地味美人”を羨む理由」で「男性は、小声でささやくように“お会計は?”って聞くと、大半がごちそうしてくれるんだよ」とおごってもらうことへの意味を見い出してることと、とどのつまりは同じ価値観なのでは?

 要は、「Domani」世代も「ブランド品を持っているアタクシ」「男におごってもらえる価値のあるアタクシ」という欲望を持っているんです。というか、これはどの世代も持っている。世代間で違うのは、欲望の出し方・見せ方だけ。自意識という鎧をまとわされ、「欲望をスマートに隠せるアタクシ」という欲望まで持たされている「Domani」世代は、どこまでが自分の欲望で、どこまでが世間に押しつけられている欲望なのか、自分でも把握できていないのです。だからバブル世代を叩く一方で、実はものすごく羨望している。と言うと、「バブルなんて羨ましくありません!!」と怒られそうだけど、「他人に幸せそうだと羨ましがられたい願望」にとららわれて常に他人の目を意識せざるを得ない世代(筆者)は、欲望を隠さなくていいバブル世代のシンプルな生き方を羨ましいなと思う時がありますよ。

謙遜や自虐は欲望の別形態

 では、「Domani」世代は何を救いにしているかというと、その答えは読者モデルによる座談会連載「産む? 産まない? する? しない?」にありました。今月号が最終回ということもあり、テーマは「来るべき40代」。

 参加読者モデルの1人から「働き続けて先々こうなっていくんだろうなという、ロールモデルになる方がほとんどいないのが気になります」という40代への漠然とした悩みが語られます。ほかの読者モデルも指摘してましたが、男女雇用機会均等法が十分に機能し、かつ出産後に復職or仕事を続けられるようになった恩恵を受けているのは現在30代の人が多く、その上の世代は仕事か結婚・出産かを選ばされてきた世代。家庭も仕事も維持している読者モデルたちもそのことを肌で感じているらしく、「もう、自分たちが家庭をもっても仕事を続ける先駆者になるしかない」と心強い発言をしていました。

 彼女たちはロールモデルという自負を持っているからこそ、頑張れる。「仕事も家庭も子どもも持ってるアタクシ」という欲望を振りまくことが許された存在になれるんですから。でも、それを表立ってやってしまうと叩かれる。だから自意識の鎧をまとい、謙遜という形で欲望を露出している。嗚呼、この悪循環は今日も地味美人を大量生産しているようです。
(小島かほり)

その生き方、選ばされていませんか?

しぃちゃん

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