[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」10月22日号

母親を妖怪扱い!? 娘の主張ばかりが目立つ「婦人公論」“毒母”特集

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「婦人公論」10月22日号(中央公論新社)

 今号の「婦人公論」(中央公論新社)の特集は、「大人になった娘が苦しむ 母の呪縛を逃れたい」です。タイトルの横に小さく「いまどきの大問題」と 添えられています。確かに、近ごろ「毒母」という言葉をネットなどでよく見かけるようになりました。「愛情を押し付ける、束縛する、依存してくるといった母親の行動が自分を抑圧してきたことに大人になってから気づいたものの、なかなかその支配関係を断ち切れず、生きにくさを感じることがある」のだそうです。いつの時代も親子の確執や悩みはありますが、“中年娘が抱く老年母への憎しみ”を切り取って焦点を当てて いる点は、なるほど“いまどき”です。こういうものに流行り廃りがあるのかわかりませんが、ニュースとしての価値はあるでしょう。

 しかし、いったいこれは誰に向けての特集なんだろう、とふと思いました。「婦人公論」は、よく「40代からの~」といった特集を組んでいますが、読者投稿欄などを見ると、50代、60代はもちろんそれ以上もかなり多い。世代によってきっちり区切られ学年誌化しているファッション誌と違って、「婦人公論」は社会的なインタビューやルポが多いので読者層の幅が広いんです。当然、今号の特集も、リアル“毒母”たちが目にする可能性は高い。もしかして、これは長年の愛読者への挑戦状なのでしょうかっ!?

<トピック>
◎特集「いまどきの大問題・大人になった娘が苦しむ 母の呪縛を逃れたい」
◎もの忘れを食い止める 最新「脳トレ」
◎室井滋「オトナ大学わくわく学部」

■たわいもないおしゃべり中で妖怪に化ける母

 もうね、最初から母親は妖怪扱いなんですよ。初めに臨床心理士の信田さよ子と杉本彩の対談「絶縁状態のままで、母が死んでもかまわない」が掲載されていまして、杉本が母と絶縁した経緯を語っているんですが、そこへ信田がいちいち憎悪を煽るような間の手を入れてくるんです。「団塊世代から70代前半くらいの母たちって、独特なんですよ」「息子の妻には遠慮があっても、娘の夫は娘と同じく自分に所属するって思うんですよ」「情報を自分に都合よく歪曲する人は多いわよ」、しまいには「まるで都合のいい情報や子どものエネルギーを吸い込んでずんずん巨大化する妖怪です(笑)」と語っているのです。杉本の母はうつ病を患っていた時期があるのに(対談中でも語っている)、団塊の世代と一括りで言われてもね……。

 ちなみに信田は1946年生まれの母世代。「私にも娘がいるんですけど、聞いてくれるものだからついつい延々と話しかけていて、ふと『あっいけない、妖怪になるかも』と思う瞬間はあります。それであわてて娘に話題をふったりとかして」「妖怪に苦しめられた人は妖怪にはならない。……そう私は信じたいです」と語っておられました。延々と話していたら妖怪に化けちゃうなんて、ベムベラベロもビックリですね。家の中でも24時間コミュ力が試されてるみたいで、この世の中は言いたいことも言えません。ポイズン!

 次のページは、「6つのタイプで見極める無意識に私を縛るお母さん」。“あなたの人生にネガティブな影響を及ぼしている”母の支配スタイルをタイプ別に分類しています。さらに「結婚できないのはあの人のせい!?」というルポへとつながります。いつもは夫という異物を「死ね」「消えろ」と過激にdisる「婦人公論」が、今号では矛先を母に向け、夫と同じ勢いでdisっています。そこには“妖怪”側の意見は掲載されていません。

 こういう場合、いつもなら最後の読者手記で、アゲているところをサゲたり、サゲているところをアゲたりとバランスを取るのですが、今回は中村うさぎがその役目を果たしていました。精神科医の斎藤環との対談「激突! 毒母VS.奴隷娘 悪いのはどちら?」です。冒頭から中村は飛ばしまくります。

「親は子どもに躾をするのだから抑圧しても当たり前。子どもはそれを乗り越えていくものじゃないですか」
「100%正しい子育てをしなくてはなんて思ったら、すごいプレッシャーですよ。母親にしてみれば、それこそ抑圧だと思う」
「私だって、べつに最初から強いわけじゃないよ。努力して強くなったの。何の努力もせずに『あなたはいいわねぇ。私は弱いから無理~』とか言う人はホントにムカつくわ」
「すべてを母親のせいにしている限り、その先へは進めません。(略)早く親を許して、自分がどう生きていくかを考えてほしい」

 これらの言葉は、息が詰まるような本特集内で唯一の息継ぎポイントのように思われました。中村が言うように、母の子育てを否定することは、当時若かった母に対して「なぜ正しい子育てをしなかったのか」と責め立てること。それはすなわち親になった(なるかもしれない)自分自身に対しても「完璧であれ」と縛り付けることになってしまいます。そしてその「完璧であれ」という抑圧が、自分をまた新たな毒母に変えるかもしれないのです。

 といっても、中村の意見もまた娘側からの視点でしかありません。女性の自立を目指し、我が娘には幸せになってほしい、失敗はしてほしくないと過剰に願うあまり“妖怪”と呼ばれるまでに至った母親たちはどう思っているのでしょうか。大人になった娘が苦悩の根源に気づき、自分を攻撃したりしてきたらどう反論するんだろう。そこが知りたい。未来の自分に起こりうるかもしれないから知りたい。流行の話題にただ同調するのではなく、母世代の読者を持つ「婦人公論」だからこその視点を盛り込んでほしかったです。巻末近くに「もの忘れを食い止める 最新『脳トレ』」という母世代向けの親切丁寧な企画が組まれているところが皮肉!

■テレビの人も「ほとんどの番組がおもしろくない」と思っている

 室井滋の対談連載「オトナ大学わくわく学部」に、日本テレビテレビプロデューサーの土屋敏男が登場しています。『進め! 電波少年』のアポなし取材や大陸横断ヒッチハイクなどを手がけ、「T部長」として有名になったアノ人です。現在は、編成局専門局長を務めながら、一般個人の人生や思い出の映像化を請け負う「LIFE VIDEO」社を設立したそう。彼はテレビについて次のように語っています。

「『昔のテレビは面白かった』というのは、15年前だって言われていました。実は、昔からほとんどのテレビ番組が面白くなかったんですよ。その時に話題になったもの以外の番組を誰も覚えていないのは、面白くなかったからでしょう」
「“当たる公式”なんで存在しないなかで一番ダメなのは、これが当たっているからうちもこれをやろう、というやり方です。(中略)1人でも面白いものは作れるし、革命は起こせるものです」

 お金をふんだんに使っていた時代を知っているテレビプロデューサーが「1人でも面白いものは作れる」と考えていることに正直驚きました。ちゃんとまじめに考えている人はいるんだなあ。これはテレビに限らず雑誌やウェブメディアにも通じることでしょう。「昔はよかった」「今の時代はお金がないから」というのは、失敗した時の言い訳にすぎないのです。

 おもしろいものが見たい、読みたい、消費したい。そんな欲求の中で生まれたものの1つに、今号の特集の「毒母」や、「○活」「○○系」「○○女子」などの新語があるように思います。どれもこれも広告代理店が一枚噛んでいるようにわかりやすく、事象を輝かせるナイスなネーミング。おもしろい。でも……、そうした言葉に生き方まで左右されてしまうのはなんか違う。「私は○○女子です、○活をしています」ってそんな紋切り型な人は実際にはいません。そういうミーハーな部分はほかの女性誌にまかせておいて、「婦人公論」はもっとリアルに私たちにフィットする世界を追求してほしい。もっともっとおもしろいものを! そんな消費者の勝手な期待を一方的に押し付けて、今回は終わりたいと思います。
(亀井百合子)

憎んでもよい、と知って救われる人もいる

しぃちゃん



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