[女性誌速攻レビュー]「MORE」7月号

負の感情を押し殺し、24時間ハッピーでいろ! 「MORE」が読者を追いつめる

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「MORE」2012年7月号(集英社)

 今号でめでたく「創刊35周年」を迎えます「MORE」。常日頃から“ハッピーハッピー”と唱え続けている「MORE」ですが、今月は記念号ということもあってか、企画も広告もハッピーだらけのハッピーターン。付録の「HAPPYバッグ」に始まり、「24時間ハッピーコーデ」「MOREモデルズのHappyセオリー」……。しかしながら、具体的に何が幸せであるのかということに関しては一切触れないのが、「MORE」のお約束です。「ちっちゃいことは気にするな」という老舗女性誌の安定感なのか、元々ハッピーに意味なんてないのか。「MORE」は読後に疲労感があります故、それを和らげる苦肉の策なのかもしれません。

<トピックス>
◎もしも、綾瀬はるかが「モアOL」だったら……!?
◎その男、ギャップあり 綾野剛
◎さらば“イライラ”“もやもや”モードな私。

■『ホタル』はたぶんガチOLの地雷です

 幸せとは何であるかを特に噛み砕こうとしない「MORE」が、ハッピーの具現化として登場させるのが、今号の表紙でもある綾瀬はるかです。同じ清純派でも宮崎あおいや蒼井優には「ヤバイ元旦那臭」や「自己主張の強い面倒女臭」を嗅ぎ取ってしまいますが、その点綾瀬はるかには汚点になるような男性遍歴はなく、さらにはOL夢のバイブル『ホタルノヒカリ』(日本テレビ系)という強力な武器も持ち合わせています。もはや今の綾瀬はるかに抗うのは、膝の状態のいい小錦を土俵外に押し出すのと同じくらい困難です。

 それにしても今月の「24時間をハッピーコーデ。Vol.1もしも、綾瀬はるかが『モアOL』だったら……!?」は夢があふれすぎてます。「温かいコーヒーとパンで朝食をとり、一週間をスタート。……アレ、もうこんな時間!?遅刻しちゃう!急がなきゃ」というテキストの横で、フランスパンをかじりながら焦る綾瀬はるか。都市伝説だと思っていた「パンかじりダッシュ女」が一周まわって「MORE」に降臨です。ほかにも「大量の書類を抱えてお仕事するはるか」「おうちであくびするはるか」「黒縁メガネでプレゼンするはるか」など、どベタ過ぎる展開にかける言葉が見つかりません。

 泥沼のハッピー地獄に綾瀬はるかを引き込んだという風にしか捉えられないこの企画。将来への漠然とした不安や職場での人間関係に苦慮している本物のOLたちが、このすっとこどっこいなOLコントを見てどう思うのでしょうか。同じ妄想でも着回しコーデはそこはかとない商業臭に一歩引いて楽しめますけど、このページには「MORE」の思想のようなものを感じてしまって、笑えませんでした。

■自分の心を無視したハッピーの先にあるのは何?

 空腹があるから満腹が分かるように、不幸があるから幸せを感じ取れるというもの。そこを「24時間ハッピー」と謳うところに、「MORE」の欺瞞があるように思います。「24時間ハッピーになる“怒り”と“憂うつ”対処法! さらば“イライラ”“モヤモヤ”モードな私。」という読み物ページには、毎号ハッピーを押し売りされる読者たちの心の叫びが浮き上がってきます。

 「読者200名に聞きました『イライラ(怒り)すること、ありますか?』」というアンケートで88%が「はい」と回答(そりゃそうでしょうよ)。「もやもや(憂うつ)すること、ありますか?」では75%が「はい」。イライラ&もやもやの原因は、ともに会社関係がトップ。その他、自分にイライラ、友人にもやもやする人が多いようです。

 いまさらアンケートにしなくても、当たり前の結果ですよね。かつて美輪明宏センセイも「お給料はガマン料」とおっしゃっていました。それなのに「MORE」はまたもや専門家を引っ張り出し、とんちんかんなことを言わせます。

「(イライラやもやもやの原因について)ずばり、我慢をしている時に起こります。その大きな原因は幼少期の言動で親や大人に怒られた経験。そこから潜在的に『怖さ』を思い出し、我慢してしまうのです」

 幼少期にそういう体験があるからこそ、今社会人として生活できているのでは……。対処法としては“イライラはマネジメントし、もやもやは客観視して、負の感情とは上手に付き合うのがポイント”というようなことを語っていました。

 というように、世の専門家たちは「それができたら苦労しない」ということしか言いませんので、この企画は「どうしたらイラもやを解消して24時間ハッピーでいられるか」ということより「今日びのOLさんはこういうことにイラついてんだ……」というベクトルで読んだ方がずっと趣深いです。「私への扱いが雑な彼にイライラ。挙げ句、やりくりして会う時間を確保するとエッチばかり求めてきて本当にキレます(26歳・営業)」や「ずっと彼氏がいないので、このまま“おひとりさま”で人生がおわるのかと思うともやもやします……友人たちも結婚し30歳も手前、だんだん誰にも相談できなくなったことで、さらにもやもやが増してきます……(29歳・事務)」「会社の人や友人はもちろん、自分とは関係のない、金持ちや政治家や芸能人など著名人のささいな言動にイライラするし、もやもやします(29歳・事務)」などなど。誰でも抱えていて当然なイライラやもやもやを後ろめたく感じている彼女たちに必要なことは、感情のマネジメントでもなんでもなく「別に24時間幸せじゃなくてもよろしい。むしろ24時間ハッピーな方が危ないよ」と、言ってあげることではないでしょうか。

 本当に「イライラ・モヤモヤ」を感じている人は多分読まない方がいい今月号の「MORE」。ここまでハッピーの押しつけが強いと、「アナタは神を信じマスカ~」のレベルです。「MORE」の罪は、35年という長きにわたって積み重ねてきたその歴史が強い後ろ盾となって、戯言が戯言に聞こえないというところです。B級タレントたちがブログで謎の健康食品をオススメするのとは、わけが違うのですよ。そろそろ自身が提唱する「ハッピー」の正体に踏み込む時期なのでは? と強く感じた今月号でした。
(西澤千央)

「MORE」

綾瀬はるかになりたい病は結構深刻な問題

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