カルチャー
[官能小説レビュー]

“大人になった元子役”のセックスはなぜいやらしい? 官能小説における“背徳感”の作用

2016/02/29 19:00

 無垢であった幼い頃の愛は、私たちと同じようにさまざまな経験を経て大人になったが、彼女を買った人々は、画面の向こう側にいたあどけない表情の愛しか知らない。一生懸命演技をし、笑顔を見せ、視聴者である私たちを喜ばせてきた子どもが、大人の姿になり、愛撫に感じながら子役の頃の台詞を吐く――こうしたアンバランスさは、人に背徳感を抱かせる興奮材料となる。

 現実にはなかなかあり得ない非現実的なシチュエーションの本作だが、愛のように、異性のアンバランスな魅力に興奮するということは、男女問わず誰もが一度は経験があるのではないだろうか。「あり得ない」と感じさせるファンタジックな世界観の中にも、「ある」と思わせる性描写や心理描写の数々が盛り込まれている――非常に官能小説“らしい”作品なのではないだろうか。
(いしいのりえ)

最終更新:2016/02/29 19:00
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