「子宮の声」に耳を傾ける女性たち。ひとり芝居の擬人化ごっこで得るものとは

 魂の欲求である子宮の声に従って生きることが、幸せのカギ! という〈子宮教〉。先週末の4月9日には、子宮系女子のカリスマである子宮委員長はる氏の著書第2弾が発売され、ますます盛り上がっているご様子です。

 でも私には未だ〈子宮の声〉が1ミリも理解できず、やりたい放題するための言い訳に聞こえてしまい……この視野の狭さ、謎物件ウオッチャー失格!? そこで〈子宮と対話するコツ〉を学べるというDVD『子宮との対話レッスン』(7000円也)を知人からお借りしてみました。

 〈調和整体セラピスト〉を名乗る彩(さい)氏という子宮系女子が過去に開催した、ワークショップが収録されているようです。彩氏は、子宮委員長はるの著書にも登場する〈心と体の調和〉をコンセプトに活動する整体師。〈子宮と体が仲良くなるメルマガ〉を発行し、サロンのHPには〈子宮力アップ整体セッション〉なるメニューも紹介されています。どんな施術であるのか激しく気になるところですが、まずはDVDのレッスンを実践し、セルフでがんばってみることにしましょう。

 DVDを再生すると彩氏の自己紹介と、子宮の声についての説明が始まります。ところでお召しになっているワンピ―ス、どこかで見たことが~、と思ったら「もうすぐ私の子宮から新しい命が誕生する予定です」と来るじゃありませんか。ああそうか、あれだあれだ。楽天1位の、あのマタニティ兼授乳ワンピースですわ。

 じゃなくて、子宮の声って〈マタニティハイ〉の産物なんじゃないのかなんて疑惑が、まずひとつ浮上。「私のおなかから」と言わず「子宮から」と強調するあたりは、子宮系女子のたしなみなのかしら。この人たち、生理痛で「お腹が痛い」と言う時も「今日は子宮の調子がイマイチで~」とか言うのかな。胎内記憶をリスニングするとき、「おかあさんの子宮にいたとき、どんな気持ちだった?」って聞くのかな。「子宮リスペクト!」は理解いたしましたが、会話がちょっと生生しくてギョっとさせられます。

◎あなたの子宮の色は何色?

 DVD全2時間のうち、1時間20分までは子宮の声を解説する体の、〈自分語り〉。治療を受けて薬を飲まなくては生理が来なかったのに、子宮の声に従って温めケア等を取り入れるようになったら順調になった。子宮の声=魂の欲求に突き動かされて海外へ旅行したら、奇跡の妊娠! パートナーシップもビジネスも思い通りにうまくいくことばかりでびっくり!

 なんでしょう、子宮系女子の体験談って、テンプレでもあるのでしょうか。DVDでは繰り返し「声の聞こえ方は人それぞれ」「正解は、ない」と言いながら、子宮教女子たちの語る物語の、この既視感! 元風俗嬢であったことを語る子宮委員長はる氏ほどハードなストーリーではないにしろ、話の流れがそっくりなんですよね。

 まあそれはそれとして、とにかく本題である子宮の声を聞くレッスンを試してみなくては。レッスンパートが始まると映像が自然風景の写真に切り替わり、ゆったりほんわかしたトーンの語りが流れます。

「子宮をイメージしたら、ゆっくり深呼吸してください。子宮さんに、質問をしていきます。パッと浮かんだ答えをキャッチしていきましょう」

 イマジネーションの世界に入るわけですね。ふむふむ。でもmessyチームとしては、脳内にしQちゃんが躍り出てきてしまうキュウ~。

「あなたの子宮の色は、何色でしょうか」

 いきなりの珍クエスチョンにお次は脳内で「てめえらの血は何色だ!」が再生されてしまいました。元ネタである北斗の拳ではそう問われた兵士たちの血は当然〈赤〉でありますが、邪道なことをしている自覚があると、ギクっとくる何かがあるのでしょうか。とはいえ、子宮は筋肉の固まりなんだから、ピンクじゃないの?

「色が思い浮かんだら、今度は子宮の重さを感じてみましょう。今あなたが感じる重さを感じてみてください」

 昔国際フォーラムで開催されていた「人体の不思議展」で、脳の重さを体験できる展示ってあったなあ。はいすみません、子宮のお話でしたね。妊婦期に何かで読んだ記憶によると確か40g程度であったと思うので、卵のSサイズくらい? って考えるのは、子宮教がいうところの〈頭で考えてばかりで感覚を大切にしていない〉ってヤツかしらあ。

「今度は、子宮の温かさ、冷たさはどうでしょうか。子宮の温度を感じてみましょう。暖かいのか、ぬるいのか、冷たいのか、どれくらいの温度なのか具体的に感じてみましょう」

 子宮温暖化計画!とかの物語が大好きな人は、〈私の子宮は冷えている〉とすりこまれているので「ひんやり、つめたい」と感じるのかもしれません。

「触ってみたらどんな感触でしょうか。それでは香りを嗅いでみましょう。もし香りを嗅ぐことができるとしたら、どんな香りでしょう?」

 あらら、ちょっとグロくなってきましたよ?

「イメージの中で、子宮をなめてみてもいいですし、かじっても、食べてみてもいいです。どんな味がするでしょうか。それではまた、あなたの子宮全体を感じてみてください。あなたの子宮さんの、今のご機嫌はいかがでしょうか」

 まさかの展開で食われそうになった子宮様は「なにすんじゃい!」と荒ぶっていらっしゃるんじゃないですかね。

◎子宮との関係は、人間関係と同じ

「その子宮さんに向かって、今話しかけても大丈夫ですか? と問いかけてみてください。そして少しお話させてくださいねとお願いしてみましょう。それではあなたの子宮さんに、名前があるかどうか聞いてみてください」

 名前を聞き出すとは、まるでエクソシスト……。

「そしてパッと浮かぶ名前があれば、その名前を憶えてあげましょう。あなたが、今子宮さんに聞いてみたいことはあるでしょうか。何かひとつ具体的に思い浮かべてください。問いかけたときの、子宮さんの感じは? 具体的にアドバイスがもらえそうだったら、もらってみてください」

 吾輩は子宮である、名前はまだない。と、子宮小説が始まりそうな勢いです。彩氏曰く、名前にこだわる必要はないけれど、名前があると「仲良くなりやすいかもしれない」そうです。そして〈子宮が言いたい事〉がないかどうか、聞いてみるんだとか。声がわからなければ聞き方を変えてみたり、もっとつっこんだ質問をしてみることがレクチャーされていきますが、このプロセスには、まるで自己暗示であると言われている〈コックリさん〉が連想させられます。

「子宮さんを感じながら、今やりたいことはなんでしょうか? 具体的に感じてみてください」

 寝たい、酒飲みたい。以上。多分コックリさんをやっても指が「ね む い」と動くような気がします。

「逆に今やりたくないことはないでしょうか」

 確定申告、経費の精算。

「ほかに言いたいことはありますか? もう一度聞いてみてください。子宮さんがあなたに言い残したことはないでしょうか。子宮さんに届くような気持ちで伝えてあげましょう。もっともっと子宮さんと仲良くなっていきます……」

 子宮の声を聞くワークは、ざっとこんな感じでした。別に蔑(ないがし)ろにはしていないけれど、仲良くなれる気がしねえ~。

 彩氏曰く、今まで子宮の声を感じようとせずにきた人の場合は、無視されてきた子宮が「突然、何事!?」とびっくりして返答してくれないこともあるそう。そして子宮からのアドバイスが聴こえたらすぐに実行しないと、「せっかく教えたのに、アドバイスし甲斐がない」と思って答えてくれなくなるので、小さなことでもすぐ実行すべし! 子宮との関係づくりは、人間関係と同じであるという教えでした。

◎セルフカウンセリングですらない

 レッスンパート後、ワークショップ参加者から子宮筋腫の話が出ると、「筋腫さんに名前をつけて、なにか言いたいことはある? ご機嫌はどう?」と、子宮同様に問いかけることをオススメする彩氏。人面瘡じゃあるまいし、筋腫が気になるなら早く病院へ行け~!と画面の前で叫びたくなりましたが、なるほど〈子宮の声〉とは、臓器擬人化ごっこなのでしょう。セルフカウンセリングですらなく、ファンタジックな小芝居で〈私の体は神聖! 不思議なパワーに満ち溢れている!〉というナルシズムを満たすレッスンであるとお見受けしました。

 子宮の声を聞くレッスンは〈体に意識を向けるための手段〉だという言い方もできそうですが、特殊なテクニックで自分に付加価値をつけたい願望も、超お手軽に叶えてくる遊びです。国家資格であるそれ(特殊技能)とは違い、技術が身についているのか何に役立つのかの評価は、自分自身で判断するしかありませんが。そして真偽の確かめようがない、完全なる〈言ったもん勝ち〉の世界ですから、誰でも発信者となることができ、伝道師&カウンセラーごっこも今すぐ実現可能。うまくいけば子宮委員長のように悩める女子たちの駆け込み寺的存在となり、承認欲求と財布を満たすことも叶うでしょう。

 この、つっこみどころ満載である〈子宮の声を聞くレッスン〉の世界にすんなる入り込める人は、単に好奇心旺盛な人もいるでしょうが、手軽に後利益(付加価値や承認欲求、ひいては開運!)をゲットしたいという願望があるのだと思います。

 逆に、半信半疑だったけれど、このレッスンを見てなんだこりゃ!と思った人は、我に返るための気付け薬にお金を払ったと思うしかなさそうです。

 こんな見解も、私の子宮が発する声なのかもしれませんね。

(謎物件ウォッチャー・山田ノジル)

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