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実写版『ONE PIECE』ルフィの声はアニメより低い? 業界関係者が「日本語吹き替え版」絶賛のワケ

2023/09/10 21:00
勅使河原みなみ(ライター)
Getty Imagesより

 8月31日より動画配信サービス・Netfilixで全世界配信されている、ハリウッド実写ドラマシリーズ『ONE PIECE』。Netfilixの発表によると、「週間グローバルトップ10」(8月28日~9月3日)で世界初登場1位を記録し、日本の「今日のTV番組TOP10」でも連日1位(9月9日時点)をマークするなど、大きな反響を呼んでいる。そんな中、日本語吹き替え版で主人公・ルフィ役を務めている声優・田中真弓について、業界関係者から、その“技術の高さ”をあらためて称賛する声が聞こえてきた。

 「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載中の世界的人気マンガを実写化した同作は、原作者・尾田栄一郎氏が自らエグゼクティブプロデューサーを務めており、海外ドラマ『プリンズン・ブレイク』シリーズで知られるプロデューサー、マーティ・アデルスタイン氏率いるハリウッドの「トゥモロースタジオ」が制作を担当。

 伝説の海賊王が残した“ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)”を探すべく航海に出た主人公のモンキー・D・ルフィら“麦わらの一味”の冒険を描いた作品で、今回のドラマでは、原作コミックスの1~12巻にあたる「東の海(イーストブルー)編」を全8話に落とし込んでいる。

「『ONE PIECE』は世界的人気を誇る作品であり、ファンタジー要素の強い作品。今回の実写化をめぐっては、制作が発表された時点で、ネット上では原作ファン、アニメファンから賛否両論が噴出しました。ルフィ役を務めるメキシコ人俳優、イニャキ・ゴドイら出演者たちのキャスティングについても『キャラに似てない』といった批判的な意見も寄せられてしまったんです」(芸能ライター)

 しかし、いざ配信が始まると、「原作で好きなシーンがカットされていて悲しい」「シナリオ改変やカットが多すぎる」「アクションシーンがイマイチだった」などのネガティブな感想はあるものの、「正直、期待以上だった」「原作を改変しているけど、展開の繋ぎ方やテーマの伝え方がとても良い。登場人物に対する解像度も高くて、確かな満足感」「漫画原作の実写化において重要なのは『再現度』じゃなくて『理解度』なんだなと、今回の『ONE PIECE』であらめて実感した」といったように、好意的な声も多数上がっている。

 なお、日本語吹き替え版は、アニメ版で長年ルフィ役を務めている田中真弓をはじめ、中井和哉(ゾロ役)、岡村明美(ナミ役)、山口勝平(ウソップ役)、平田広明(サンジ役)ら、おなじみの面々が担当しているが、「吹き替えに合わせて違和感ないよう演技しててすごい」「アニメと別物として演じてるあたりプロフェッショナル」と、その演技を絶賛する声も少なくない様子。

実写版『ONE PIECE』で、声優・田中真弓の声が「アニメ版より低い」ワケ

 そんな『ONE PIECE』の日本語吹き替え版について、声優業界関係者は一体どのように評価しているのだろうか。

「ルフィ役の田中に関しては、アニメ版よりも少し声を低くして演じており、俳優の大人っぽいイメージにとても合っていました。1999年の放送開始から20年以上にわたってルフィを演じてきた田中だけに、意図的に変えようと意識せずとも、キャストの見た目に応じて、自然と『実写版ルフィに合う声』 が出てきたのでは。対して、ルフィ以外の『麦わらの一味』 の声優たちの芝居はアニメとあまり変わらない印象を受けました。特に、中井や岡村は田中ほど演技の幅が広いわけではないですから。しかし、だからといって芝居が『実写に合っていない』 ということもなく、これといった違和感もなかったですね」(声優業界関係者)

 また、声優陣に対し、制作スタッフからの注文は「なかったはず」とも推測する。

「おそらく、声優に丸ごと『お任せ』していると思います。 洋画の吹き替えの場合、海外俳優に声や雰囲気を寄せるよう、日本の音響監督からオーダーがあり、それに合わせた芝居をするのが一般的。しかし、『ONE PIECE』は日本発のアニメですし、俳優たちはそもそも、アニメを参考にしてキャラを演じているはず。そのため、“オリジナル版”キャストの声優たちは、自分が思うように演技をすればいいわけです」(同)

 なお、アニメと海外作品の吹き替えでは、声優に求められる技術も異なるのだとか。

「吹き替え翻訳する海外作品の場合、映像翻訳者が元の言語の長さと訳したセリフの長さを調整しますが、声優も俳優の口の動きに合わせてセリフを発しなければなりません。一方、日本のアニメは、作画の時点で声優のブレスのタイミングが考慮されて作られており、海外実写化作品の吹き替えのほうが、アニメの収録と比べると大変なんです。そんな中で一歩踏み込み、実写版ルフィに合わせた芝居をした田中は、声優として高い技術を持っていると思います」(同)

 字幕版を視聴した人は、吹き替え版を見ることでより一層、声優陣の実力の高さを実感することができるだろう。

勅使河原みなみ(ライター)

独自に集めた情報をもとに、声優に関する記事を執筆しているライター。好きな食べ物は浸し豆。

最終更新:2023/09/10 21:00
なお、ゾロ役・真剣佑の人気も上がっている模様
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