アイドルオタクのモヤモヤ

ジャニーズファンが避けてきた「ジャニー氏の性加害」問題――研究者に“向き合い方”を聞いた

2023/05/06 16:00
雪代すみれ(ライター)
ジャニーズ事務所はどのような対応をするのか(C)サイゾーウーマン

ジェンダーや人権をテーマに取材をするライター・雪代すみれさんが、アイドルに関する“モヤモヤ”を専門家にぶつける連載「アイドルオタクのモヤモヤ」。今回のテーマは、「ジャニー喜多川氏の性加害報道をジャニーズファンとしてどう受け止めるか」です。

▼「男性ジャニーズファンの苦脳」についてお聞きした【前編】はこちら

 今年3月、BBC(イギリスの公共放送局)がジャニーズ事務所創業者・ジャニー喜多川氏の性虐待問題を追及・告発するドキュメント番組『Predator:The Secret Scandal of J-Pop(邦題:J-POPの捕食者 秘められたスキャンダル)』を放送。その後、4月には、元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトさんが日本外国特派員協会にて記者会見を行い、ジャニー氏から性被害を受けていたことを打ち明けた。

 会見を受けて「ジャニーズ事務所は説明責任を果たすべき」といった批判が噴出する一方で、「まったく知らなかった」「うわさ話として聞いたことはあったけれど、詳しくはわかっていなかった」「性暴力は許せない、でも推しを嫌いにはなれない」などジャニーズファンからは戸惑いの声も見られる。

 自身もジャニーズファンであり、男性ジャニーズファンの研究をしている東京工業大学大学院博士後期課程の小埜功貴さんに、ジャニー喜多川氏の性加害報道をどう捉えているか話を聞いた。

ジャニー氏の性加害のことを知って、オーディションを辞退した

――ジャニー氏の性加害は、1999年の「週刊文春」(文藝春秋)が大々的に報じ、それ以外にも元ジャニーズタレントが告発本を出ていましたが、10代の若いジャニーズファンの中には、それらをまったく知らなかった人もいるようです。小埜さんは1996年生まれとのことですが、いつ知りましたか。

小埜功貴さん(以下、小埜) 実は、ジャニーズ事務所に入りたいと思ったことがあって、中学3年生のとき、オーディションに応募したんですね。書類選考の結果を待っている間に、もし入所することになった場合のことを考え、もう少しジャニーズ事務所がどういう場所なのかきちんと知っておかないといけないなと、ネットでいろいろと調べていて。その中で99年の「週刊文春」の報道や、その後の裁判のこと(※)、また告発本のことを知りました。

※1999年に「週刊文春」(文藝春秋)がジャニー氏の性加害問題を14週にわたり報道し、ジャニー氏及びジャニーズ事務所は文藝春秋を提訴。1審・東京地裁では文藝春秋が敗訴、2審・東京高裁ではジャニー氏の性的虐待の事実が認められた。ジャニーズ側は最高裁に上告したが、2004年2月に上告棄却され、高裁の事実認定が確定している。

※参照:文春オンライン(2023年3月8日)

 知ってはいけないことを知ってしまったような感覚や、裏切られたようなショックを受けて……。結果、書類選考は受かったのですが、そのことを知ってから怖くなってしまい、それ以降の審査は辞退しました。

 カウアンさんが記者会見の際に「一連の被害について、当時(「週刊文春」が報じた頃)大手メディアが報じていたら、入所をためらうなど選択は変わったと思いますか?」と聞かれていましたが、当時の彼は知らなかった一方で、まさに僕は知った側だったので、途中で審査を受けるのをやめました。

――「すごくショックを受けた」とのことですが、ジャニーズファンをやめようとまでは思わなかったのでしょうか。

小埜 その情報自体にはショックを受けましたが、当時、ネットで調べられることは限られていましたし、まだ中3だったので、具体的にどういうことなのかまで理解はできなかったんです。

 それに、デビュー組のメンバーたちがジャニーさんへの感謝や、面白エピソードを語る姿もたくさん見てきたのもあって、混乱しながらも、アイドルの存在まで嫌いになることはなかったですし、テレビや新聞の報道で見かけることがなかったので、当時10代の頃の自分の中で、だんだんと風化していったような感じでした。

風化させないことが大切
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