大関暁夫氏インタビュー

ジャニーズはファンをバカにしている――経営コンサルタントが、性虐待問題めぐる“不祥事対応”を考察

2023/04/28 15:00
サイゾーウーマン編集部

ジャニー氏の性虐待問題、聞き取り調査の結果はどのように報告すべきか?

――問題だらけだったジャニーズの“初手”ですが、その後「朝日新聞」が、取引先企業に対し、性虐待疑惑に関する対応を説明する文書を入手し、報道。そこでは、謝罪に始まり、性虐待疑惑に関する「問題がなかったなどと考えているわけではございません」という見解、社員や所属タレント向けの相談窓口を設け、「ヒアリング及び面談」を実施してきたこと、さらには元所属タレントに関して、外部専門家の相談窓口を設け、個別対応を行う準備を進めていることなどを詳細に記しています。なぜこれを取引先企業だけに向けて報告したのかが気になるのですが。

大関 事務所が説明している対応姿勢はともかく、真っ先にこれを伝えるべきは業者筋ではなくファンを含めた世間であるはず。そこの履き違えは、はからずもジャニーズ事務所の「ファン軽視、ビジネス重視」の考え方を露呈させたのではないでしょうか。これではジャニーズのアイドルを一生懸命応援し、この問題を心配しているファンの皆さんがかわいそうだと感じてしまいます。

 メディアはジャニーズ事務所からの報復を恐れずに、そのあたりを堂々と報じてしかるべきかと思いますし、それをせずに見過ごしていくなら、ジャニーズは姿勢をあらためる機会を逸することになるのではないでしょうか。

――ジャニーズ事務所は、すでに聞き取り調査を行っており、取引先企業には「現時点では問題となる点は確認されておりませんが、あくまで社内のヒアリングになりますので十分であるとは考えておりません」と説明しているそうです。

大関 聞き取り調査をして、「まったく何もありませんでした」ということはないと思います。少なくとも被害を訴えているカウアン・オカモト氏から直接話を聞くなりして、当時の事実関係を詳細に調べるべきであり、その実態は、再発を防止するためにも、会社としてしっかりつかんでおく必要があります。そして、その結果を明らかにすることも重要です。

――プライバシーなどの観点から、結果の公表は難しいのではないかという気もしてしまうのですが……。

大関 具体名を出す必要は一切ありませんが、これだけ騒ぎになっている以上、調べた事実関係を報告する必要があると考えます。例えば、「過去の所属タレントも含め、ヒアリングした●人の中で、ジャニー氏からの性的接触にあった人は●人いました」「うちこうした事実を性的被害として問題視している人は●人いました」など、報告方法はいろいろとありますから。

――取引先企業に送付したという文書には、被害者がいた場合の対応については触れられていませんでしたが、企業としてすべきことはなんでしょう。

大関 被害者をケアする責任は当然あります。一方、被害者から裁判を起こされた場合にも対応が生じますし、もしくは和解する形で慰謝料を支払うこともあり得るのではないでしょうか。それには、性虐待問題はジャニー氏個人の問題か、社長という立場を利用した会社としての問題かを明確にすることが必要になってくる。そこは法律の専門家に入ってもらい、被害者と個別の話し合いをして、落としどころを見つけていくことになると思います。

――再発防止策にはどのようなものが考えられるでしょうか。

大関 少なくとも、経営者を含め、管理職以上はハラスメント関連の教育をしっかり受けること。実権を握っている人たちが、自分の地位を利用してハラスメント行為をすることがないよう、過去の事例を参照しつつ、何がハラスメントにあたるのか、教育研修を受ける必要があります。今の時代の常識では、たとえ性的な行為がなくても、上下関係を利用し、「自分の言うことを聞いたら、この番組に使ってやる」と言うだけで“アウト”ですから、「ダメなものはダメ」としっかり学ぶことが大切です。組織として、トップも管理者もスタッフもタレントもハラスメントに対し、同じ価値観で物事を判断していける土壌を作らなければいけません。

――そういったハラスメントの教育を受けていることを、公にしていくことも大事だと思いました。

大関 調査をして、その結果を報告した上で、「今は研修を行い、健全な組織経営を心掛けています」というのは当然の対応でしょう。人気タレントを数多く輩出し、メディアに対して強い影響力を持つジャニーズ事務所は、流行を生み出すことで人を“動かす”力を持っています。その責任の大きさを感じながら、自分たちはどうあるべきか、今何をしなければいけないのかを理解した上で、それにふさわしい行動を取ってほしい。今までは“臭いものにフタ”という印象が強かったですが、今回の不祥事告発を機に膿を出し切り、悪しき組織風土を断ち切る覚悟で、真摯な対応を行い、企業体質とともに業界のイメージも率先して変えてほしいと願っています。

取材協力:大関暁夫(おおぜき・あけお)
All About「組織マネジメント」ガイド。東北大学卒。横浜銀行入行後、支店長として数多くの企業の組織活動のアドバイザリーを務めるとともに、本部勤務時代には経営企画部門、マーケティング部門を歴任し自社の組織運営にも腕をふるった。独立後は、企業コンサルタントの傍ら上場企業役員として企業運営に携わる。



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最終更新:2023/04/28 15:00
膿を出し切ってほしい
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