[女性誌レビュー]「婦人公論」2023年3月号

87歳・吉行和子のNetflix加入成功エピソードに希望を感じる「婦人公論」

2023/03/05 16:00
島本有紀子(ライター)
87歳・吉行和子のNetflix加入成功エピソードに希望を感じる「婦人公論」
「婦人公論」(中央公論新社)2023年月3月号

 「婦人公論」3月号(中央公論新社)が発売中です。今月の特集は「達人たちに学ぶ ひとり暮らしのたのしみ」。フォロワー20万人超えの90歳インフルエンサー、87歳でNetflixに加入してみた吉行和子、70代で恋に落ちた読者など、少し前までの“ご老人像”を打ち破るひとり暮らしの達人が登場します。早速、中身を見ていきましょう! 

<トピックス>
◎大崎博子 90歳、朝は太極拳、夜は晩酌。SNSも使いこなす
◎吉行和子 記憶力も体力も、努力でカバーしています
◎読者体験手記 心ときめく彼との時間

ノリノリ紀香的な魅力あふれる90歳インフルエンサーが登場

 まず見ていくのは、特集「達人たちに学ぶひとり暮らしのたのしみ」内のインタビュー記事「大崎博子 90歳、朝は太極拳、夜は晩酌。SNSも使いこなす」。大崎さんは都営住宅でひとり暮らしをする90歳です。78歳で始めたTwitterが注目を集め、現在のフォロワーは20万人超。『89歳、ひとり暮らし。お金がなくても幸せな日々の作りかた』(宝島社)などの著書も上梓している“ご高齢インフルエンサー”といえる人物です。

 78歳でパソコンに出会った大崎さんは、Macを購入しTwitterを始めたそう。最初のフォロワーは数人の友人のみでしたが、政府への批判をつぶやいてバズったことをきっかけに、フォロワーが増えていったとのことでした。

 78歳初パソコンにMacを選ぶセンスにもしびれますが、大崎さんのツイートを見てみると、その言語センスに驚かされます。後期高齢者と呼ばれるのを嫌い「高貴香麗者」としたり、気合を「喜愛」と書いたりするなど、少し前の(ブログタイトルが『氣愛と喜愛でノリノリノリカ』だった時代の)藤原紀香を彷彿とさせるグルーブ感があふれているのです。

 一方でフォロワーを「フォローワ」としたり、語尾に「♪☆!」を3つ付けたりなど、90歳ならではのかわいらしさも。これは癖になります。フォローワさんたちへのリプライもマメ。麻雀を嗜んだり、ブレイクダンスの大会をテレビ観戦したりと、興味も広い様子です。インフルエンサーになる人というのは、こういうお茶目かつ視野が広い、紀香的な方なのだな……と心打たれました。

87歳・吉行和子がNetflix加入

 女優・吉行和子のインタビューも読みごたえがありました。「28歳のときには一応結婚もしました。でもね、早々に『あー、失敗した』と感じてしまって」「私はひとりでなきゃ生きられないんだ、と確信しました」という吉行さん。「家族と一緒にいるのが楽しい、という感覚が私にはないのです」と言い切れるところ、かっこいいです。

 そんなひとり暮らしを満喫する吉行さんは最近、Netflixに加入したそう。数年にわたって入り方がわからず放置していたそうですが、昨年末、一念発起しスマホでの加入手続きに挑戦。「困って電話で問い合わせたら、親切な人でねえ、一手順ごとに一緒に操作しながら教えてくれたんです」と言い、無事加入できたときには「和子さん、おめでとうございます!」と祝福されたそうです。いくつになっても前進できるという希望を感じます。

 先に触れたご高齢インフルエンサー・大崎さんも「昼食後は、ネットフリックスで映画や韓国ドラマを観てくつろぎます」と語っていましたが、今どきのシニアはNetflixも使いこなすのだなぁと時代の流れを感じます。自分が80代・90代になったとき、こんなふうに柔軟に生きられるだろうか……と思いを馳せました。

老いらくの恋に立ちはだかるのは「お金」

 最後に見ていくのは、読者から寄せられた投稿を掲載する「読者体験手記」のコーナー。今回のテーマは「心ときめく彼との時間」で、2通の投稿が紹介されています。

 一通目は79歳女性。昨年、夫を亡くしたばかりですが、近所の喫茶店のマスター(推定50代)が心の癒しで、喫茶店に通うようになったそうです。マスターの笑顔を見るため必要以上に喫茶店でお金を使っていることに、「夫の遺族年金だって雀の涙ほどしかもらえないのに」「古本屋で売れた本代700円を握りしめ、マスターのもとへ向かったことも」と葛藤もある様子。「ナポリタン700円、チーズケーキとコーヒーのセットで1000円。合計1700円が毎回の平均支出。こんなことをしていたら、いつか破産するだろう」とも書いています。

 喫茶店の営業は週1回とのこと。週1回、1700円の喫茶店通いで、破産の不安を抱かせる日本の行く末の恐ろしさを感じるとともに、淡い恋の一番の不安が、相手の気持ちや恋敵への嫉妬などではなく「お金」である点がリアルでした。楽しい老後には、何につけてもある程度のお金が必要なのかもしれないと思わされます。



島本有紀子(ライター)

島本有紀子(ライター)

女性ファッション誌ウォッチャー。ファッションページから読み物ページまでチェックし、その女性誌の特性や読者像を想像するのが趣味。サイゾーウーマンでは、「ar」(主婦と生活社)と「Domani」(小学館)レビューを担当していた。

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最終更新:2023/03/05 16:00
婦人公論 2023年 3月号 [雑誌]
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