テレビ業界のウラ話

『バイキングMORE』『今くら』……打ち切り番組に見る、フジテレビの“失策”と日本テレビの“抜かりなさ”

2023/01/02 08:00
村上春虎(ライター)
『バイキングMORE』『今くら』……打ち切り番組に見る、フジテレビの“失策”と日本テレビの“抜かりなさ”
写真ACより

 昨今、テレビ番組の人気を測る指数は、世帯視聴率、個人視聴率、コアターゲット、TVerといった無料配信動画サービスの再生回数など多岐に渡り、ひとくくりにできるものではなくなった。ただ、やはりテレビ業界にとって「視聴率」は何よりも重要であり、2022年もその低さから“打ち切り”になってしまった番組はいくつも存在する。

「視聴率の努力目標は局や番組によって違うので、一概には言えませんが、例えばフジテレビは、『ゴールデンタイムの個人視聴率』で3%、日本テレビは同じ条件で5%の確保が求められる。一方、テレビ朝日やTBSは、制作者によってはいまだに、世帯視聴率を切り捨てない保守派もいます」(テレビ業界関係者)
 
 22年に打ち切られた番組を見ると、「遅きに失した番組も、うまく次の新番組に軟着陸させた番組もある」(同)というが、前者の例では 『痛快TV スカッとジャパン』(フジテレビ系)が挙げられるそうだ。

「ウッチャンナンチャン・内村光良が司会を務める月曜午後8時枠の『痛快TV スカッとジャパン』は、昨年3月に7年半の歴史に幕を下ろしましたが、すでに5年ほど前に賞味期限は過ぎていました。同番組は、視聴者から寄せられたスカッとした体験談を元に作られる再現VTRが売りだったものの、どこまで実話に忠実に落とし込むかが曖昧なまま、どんどん内容が非現実的な方向にエスカレートしていった。またそれ以上に、投稿されるネタそのものが他人からの受け売りだったりと、グレーな雰囲気が常につきまとっていました。以前から“迷走していた番組”の1つと言えるでしょう」(制作関係者)

 4月には、引き続き内村が司会を務める『あしたの内村!!』がスタートしたが、「視聴率に上がり目はなく、フジテレビの月曜午後8時は再び“死に枠”になりそう」(同)という。

 またフジテレビは、番組の固定ファンをみすみす捨ててしまう失策を行ってしまったよう。お昼のワイドナショー『バイキングMORE』は、MC・坂上忍の「動物愛護活動に注力する」という申し出によって、昨年4月1日に終了したが……。

「坂上の威圧的な態度に嫌悪感を持つ視聴者もいましたが、ズバッと物申す姿を支持するファンもいて、低空飛行ながら安定した視聴率を保っていました。それがいきなり『ポップUP!』という毒にも薬にもならない生活情報バラエティにシフトしてしまったことで、『バイキングMORE』の“お客様”は去ってしまったとみられる。結局、『ポップUP!』は9カ月という短期間で終了しました」(同)

 一方、抜かりないのが日本テレビだ。バラエティ番組『今夜くらべてみました』(以下、『今くら』)は昨年3月、10年の歴史に幕を閉じたが、後継番組『上田と女が吠える夜』がウケているという。

「『上田と女が吠える夜』は、くりぃむしちゅー・上田晋也によるトーク番組。出演者は女性タレントに特化していて、毎週『理解できない食のこだわり』『1分1秒も無駄にしたくない女』といったテーマに沿って、該当するゲストたちがトークを繰り広げます。この形式はもともと『今くら』でシリーズ化されていたもので、しかも出演者には、重盛さと美、餅田コシヒカリなど『今くら』の常連も名を連ねている。これは日テレの確信犯的な編成で、“表紙”は違うものの、よもやま話が好きなこの枠の視聴者を離さない作りにしているのです」(同)

 フジテレビの局内にも、他局のテレビマンがうらやむ優秀なクリエイターは数多く存在する。だが、彼らの作る番組を、どのタイムテーブルにどう組み込むのか、生かすも殺すも編成部次第ということなのかもしれない。

村上春虎(ライター)

村上春虎(ライター)

1976年生まれ。バラエティ番組や情報番組などテレビ番組の制作に携わる傍ら、現場で見聞きした情報やリサーチしたネタをネット記事で放出する。

最終更新:2023/01/02 08:00
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