【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

チャールズ新国王は「スキャンダルを操る男」か――息子・ヘンリー王子を“利用”せざるを得ないワケ

2022/10/22 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

チャールズ国王は「正義」を体現するためにヘンリー王子を利用?

――しかし、今回、ヘンリー王子を切り捨てるとなれば、チャールズ王を非情と捉える国民もいるのでは?

堀江 もちろんいるでしょう。しかし、イギリス人にヘンリー王子、そしてメーガン妃の人気はもはやありません。しかも彼らの人気は落ち続けています。こうなると、そんな人物を(実の子とはいえ)恩情的に見守っていると、自分の人気まで落ちてしまう……そう、チャールズは判断したのでしょう。

 そもそも国王とは正義を体現すべき存在です。しかし、近代以降の国王は「君臨すれども統治せず」といわれ、政治的な存在ではありません。政治に関するアクションは取りにくいのです。

 では、どうやって自らの正義を証明するかといえば、その方法の一つが、スキャンダルを出した身内と関わることなのだと思います。見守るのか、断罪するのか。スキャンダルメイカーであるヘンリー王子とメーガン妃を制御することができるのかどうかによって、新国王としての正義と手腕が今、試されようとしているのです。

――自分が国王としてふさわしい存在であるかを世界に証明するために、息子を利用ということでしょうか?

堀江 そうですね。もちろん本当の理想は、ヘンリー王子が王室批判などしない人物に育つことでした。しかし、そうはならなかったので、正義を体現すべき国王としては、反乱分子であるヘンリー王子に、宣戦布告せざるを得ないというあたりでしょう。

 ヘンリー王子も焦って、Netflixにペラペラとしゃべった英王室批判……とりわけ父であるチャールズへの批判を取り下げようとしていると報道されていますが、事実ならば、あまりに無様ですよね。

――日本の皇室でも、今上陛下に対し、弟宮である秋篠宮さまがときに批判めいた言葉を口になさることがありましたね。

堀江 王室・皇室内の兄と弟の関係は難しいですよね。つねに対比されて扱われてしまいます。性別、そして立場や年齢が近いだけで、比較対象になることもしばしば。しかも「優等生ウィリアム王子」と、「自分の思うがままに生きてしまうヘンリー王子」というように極端な形で対比されがちです。

 日本でも国民の反対を押し切って、小室さんと結婚した眞子さまの後では、高額なティアラの製作を辞退したという愛子さまが「理想の内親王」として人気を得ました。

 自分や身内の人気・不人気に戦略的に向かい合わざるを得ないのが、現代の王室・皇室の方々だといえるでしょう。

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『眠れなくなるほど怖い世界史』(三笠書房)など。最新刊は『隠されていた不都合な世界史』(三笠書房)。

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最終更新:2022/10/22 17:00
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