“中学受験”に見る親と子の姿

勉強嫌いなのに中学受験、志望校には偏差値10足りず……やる気のない娘を変えた「母の戦略」

2022/10/22 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

勉強嫌いなのに中学受験、志望校には偏差値10足りず……やる気のない娘を変えた「母の戦略」
写真ACより

 中学受験は、各ご家庭の任意で行うものなので、やってもやらなくても自由である。よって、中学受験参入の有無は、第三者が口を出す問題ではないと思うのだが、ちまたでは「遊びたい盛りの小学生に長時間勉強させている」という類いのネガティブなイメージが広がっているため、中学受験を批判する人は少なくない。
 
 では、実際、中学受験生の勉強量はどれくらいなのだろう。栄光ゼミナール・2019年中学入試アンケート調査よると、小学6年生は夏休み以降、平均で平日3~5時間。2.3%と少数派ながらも9時間以上と回答した子もいる。もちろん学習時間が増えれば増えるほど、成績が上がるということはないものの、難問揃いの難関校を目指す子どもたちの学習時間は「少なくない」のは事実だろう。
 
 こういったデータを見ると、「かわいそう」という声が聞こえてきそうだが、子どもたちの中には、知的好奇心を満たしてくれる塾の授業を心から楽しみ、勉強が苦にならないタイプも存在する。また、学習時間の長短にかかわらず「中学受験はとても楽しかった」と証言する経験者は多い。こういった子どもにとって、中学受験は有意義な体験であるのは確かだ。

 ただ問題なのは、もともと勉強が嫌いで、中学受験に参入したものの偏差値が伸びず、ますます勉強嫌いになるタイプの子たちである。このタイプの子を持つ親は「勉強が嫌いなのに、中学受験をさせるのはいいことなのか?」という悩みにぶち当たってしまう。

 晴恵さん(仮名)は、麻紀さん(仮名)という現在大学1年生の娘を持つ母親である。晴恵さんは公立中学から都立高校に進み、中堅大学を卒業しているが、麻紀さんには中学受験をさせ、私立中高一貫校に通わせた。

「個人的に、内申点が合否判定に関わる高校受験にすごい恨みを持っています(笑)。私は結構、真面目なほうで、勉強も嫌いじゃなかったんですが、中学3年生の時の担任と反りが合わず、そのせいか担任の教科は内申点がさっぱり。試験で満点を取っても、通知表は『4』で、結果的に志望した都立高校をあきらめざるを得なかったんです。それが、今でもすごく悔しくて……。それで、娘には内申点に左右されない世界に行ってもらいたかったんです。そんなこともあり、私主導で麻紀を中学受験塾に入れました」

 ところが、晴恵さんの目には、麻紀さんは大がつくほどの勉強嫌いに映ったという。自発的な学習はおろか、塾の宿題もやらず、揚げ句の果てには、塾に通うのもサボりだすという始末だったからだ。

中学受験案内(2023年度用)
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