仁科友里「女のための有名人深読み週報」

有働由美子アナの「オバハン自虐」を許容していた大組織・NHKの“男尊女卑”体質

2022/08/25 21:00
仁科友里(ライター)

有働由美子アナの中には“オジサン”が住んでいる

 おそらく、有働応援団の皆さんは、「記者の急襲にもかかわらず、ユーモアのある返しだ! サバサバしてさすがオトナの女!」と好意的にみなすのだろう。でも、私は有働アナの中に“オジサン”が住んでいるんだなぁと思わずにいられない。

 週刊誌が有働アナを取材するのは、彼女が知名度/好感度ともに高い「数字が取れる人」だからだ。週刊誌はビジネスだから、オジサンでもオバハンでも子どもでも、数字さえ取れれば何だっていい。長年、女性アナウンサーのトップランナーとして走ってきた有働アナが、こんな簡単な人気商売のカラクリをご存じないはずがない。

 にもかかわらず、「……こんな“オバハン”のために」という言葉を持ってくるのは、有働アナの中に「オバハンというのは嫌われる存在だから、とりあえずへりくだったほうが、好感度が上がるし、読者に喜ばれる」という、まるでオジサンのような“思い込み”があるからではないだろうか。

 その思い込みがどこで作られたか、他人に知る由もないが、おそらく有働アナを取り巻く環境……つまり会社(NHK)にもそういう体質があったのではないかと推測する。

 私は有働サンよりちょっと下の世代だが、若い頃「年齢によって、女性の進退を決める」ことが公然となされてきた印象がある。私の友人は財閥系企業に勤めていて、社則にはないものの「女子社員は25歳で退職する」ことが暗黙の了解だった。

 いざ25歳になると、周囲の男子社員に「早く辞めてよ。若い子が入ってこない」と面と向かって言われたり、仕事の面談でオジサン上司に「交際相手はいるのか、結婚の予定はあるのか」と聞かれることは珍しくなかったそうだ。受付や秘書課の女性が30歳を過ぎると、本社から支社に異動させられるケースも実際にあった。

 若い人は、良くも悪くも大人の影響を受けやすいから、1日のほとんどを過ごす会社という場所で、それなりの地位を持つオジサンが、女性に対してこういう態度を取ると、「女性は社歴が上がると、失礼なことを言われたり、理不尽なことをされても仕方がない存在」と刷り込まれてしまうのではないだろうか。

 有働アナは20代の若手の頃から、公共の電波を使って、自身の容姿や年齢を自虐してきた。それは逆に言うと、NHKが彼女の発言を許容していた、彼女の発言が面白いと思っていたということではないだろうか。

 今さら言うまでもないが、有働アナは日本を代表する女性アナウンサーで、彼女の実力は誰もが評価しているはず。けれども、有働アナの中に住みついたオジサンが、「女性は仕事ができても、若く美しくなければ価値がない」とささやいてくるために、彼女はする必要のない自虐を延々としてしまうように思う。

ウドウロク
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