“中学受験”に見る親と子の姿

中学受験「算数1科目入試」の戦略に失敗――「倍率10倍超え」入試に賭けた母が今思うこと

2022/08/27 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

 “親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

写真ACより

 首都圏の中学入試は長い間、国算理社の4科目、あるいは国算の2科目というスタイルが主流だったが、最近ではさまざまなタイプの入試が出現している。その中の1つに「算数1科目入試」というものがある。

 20年ほど前に、一部の有名男子校が実施したのを皮切りに徐々に増え、近年では人気女子校も参入。今では、算数1科目入試を実施している首都圏の中高一貫校は30校弱ほどに及ぶ(※)。
(※)算数、国語、英語から1科目選ぶ受験形式を採る学校も含む。

 東京・神奈川の受験生は2月1日が受験解禁日。この日から、午前午後と連日の連戦が始まるのだが、この算数1科目入試は多くの学校で、1日の午後に行われている。午後受験は2科目受験が多いので、それに比べれば、負担が少ないということ、また、「できるだけ早めに合格がほしい」という受験生心理も相まって、算数1科目入試は大人気になっているのだ。

 希美さん(現在中学1年生・仮名)も算数1科目入試に挑戦した1人だ。

 希美さんの中学受験への参入は通常よりも少し遅く、小学5年生の秋からだったという。希美さんの母である靖子さん(仮名)はこう振り返る。

「中学受験に参入したきっかけは、希美がお友達から、お姉さんのTikTok動画を見せてもらったこと。私には詳しくわかりませんが、そこには、私立D学園の高校2年生だというそのお姉さんが、部活の仲間たちと楽しそうに踊る姿が映されていたそうなんです」

 このお姉さんは中学受験でD学園に入学。ダンス部に所属し、部員内でダンス動画をTikTokに上げているらしいのだが、小学生の希美さんには、その姿はあまりに眩しく、「D学園を、まるで夢の世界のように感じたみたいです」という。

 それから希美さんは、自分がD学園で過ごす将来を夢見るようになり、「中学受験がしたい!」と言い出したそうだ。

「聞けば、そのお姉さんは小6から塾に行き出して、D学園に合格したとのこと。5年生の秋ではありましたが、希美も大丈夫な気がしていました」

 その後、希美さんは地元塾に入り、それなりに勉強に励んでいたそうだ。

「D学園は人気校ですが、超難関校というほどではありません。頑張れば、希美でも行けるのではないか? と思っていたのですが、やはり、4科目をこなすには時間がなさすぎて、偏差値は思うようには伸びませんでした」

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