白央篤司の「食本書評」

ひとり暮らしのムリしない料理のコツは、ほどよくラクに「そこそこおいしい」! 自分のための食事をどうする?

2022/08/13 14:00
白央篤司(はくおう・あつし)

時短、カンタン、ヘルシー、がっつり……世のレシピ本もいろいろ。今注目したい食の本を、フードライター白央篤司が毎月1冊選んで、料理を実践しつつご紹介! 

今月の1冊:『68歳、ひとり暮らし。きょう何食べる?』大庭英子

68歳、ひとり暮らし。きょう何食べる?』 (家の光協会、1650円)2022年6月20日発行

 40代の後半に入って、食欲が落ちてきたことを如実に感じる。

 「しっかり食べる」がすこやかな生活の基本と、ずっと思ってきた。実際一日三度の食事を大切にしてきたが、食欲が湧かないこともあれば、めんどうくさい気持ちが勝って、適当に済ませてしまう回数も増えてきている。

 平均寿命を考えると、人生はまだまだ長い。今からこんなことではダメだよなあ……と暗い気持ちになってしまう。フードライターなんて看板を掲げてる人間が言うことではないと思うが、このところの正直な気持ちなんである。

 だから書店で、本書のタイトルを目にして思わず手に取った。

 著者の大庭英子(おおばえいこ)さんは福岡県出身、料理研究家として40年以上のキャリアをもつベテランだ。料理関係者からとかく厚い信頼を置かれている方で、「困ったとき、初心に帰りたいときに、大庭さんの本を開く」なんていう人はかなり多いのである。68歳でひとり暮らしの大庭さんは、どんなふうに「きょう何食べる?」という思いをキープしてきたんだろう。

「自分のためだけに食事を作ることを面倒に感じることもあるでしょう。そこでこの本では、わたしが毎日食事を作るなかで生まれた、料理がラクになってちょっと楽しくなる、そんな工夫をあれこれ紹介しました」(『はじめに』より)

 主食(米やパンなど)のほかに用意するのは2皿と決める、毎日栄養バランスをよくしようとせず1週間単位で考えるぐらいでOK、といった基本的な考えの中に、「作りおきと作りたてを組み合わせ」よう、というのがあった。ストンと来た。

 作りおきは、言い換えれば「あまりもの」でもいいと私は読解する。そして作りたては目玉焼きひとつだって、いいのだ。なんなら、ごはんを炊くだけでも作りたてがひとつ生まれる。やる気が出ない日の私の食事が、急に太鼓判を押されたような気持ちになって、ちょっと元気が出てきた。

 どの文章も「こうしなさい」ではなく、「こうすると便利ですよ、安心ですよ」といった圧のない筆致で、やさしい。読む側が「自分だったらこうすればいいかな」とゆるく紐解きつつ考えられるのも、ありがたい。

 冷凍活用のくだりなど(13ページ)「ご飯は炊きたてが一番おいしいと知ってはいるけれど、冷凍してもそこそこおいしいから」なんて表現が、うれしくて。そう、おいしさ最優先でムリして頑張るよりも、ほどよくラクに「そこそこおいしい」でじゅうぶん、という人も多いはずだ。

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