『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』親への禍根とゴミ屋敷「片付けられない部屋 ~ゴミの中に埋もれた思い出~」

2022/07/25 18:38
石徹白未亜(ライター)

『ザ・ノンフィクション』親へのわだかまりとゴミ屋敷

 以前も『ザ・ノンフィクション』では、医学部に入れようとする親に育てられ、医学部に入ったあとは燃え尽きたようになってしまった青年が出てきた。教育虐待のようなことをされた自分の境遇をブログでつづる29歳の男性で、みずきと境遇が似ていたと思う。

 その29歳の青年も、26歳のみずきも、現在の心を占める筆頭の存在が「(自分へ関心を向けてくれなかった)親」に見えた。20代という貴重な時期に、親に対するモヤモヤ、イライラが心の大部分を占めている状況はとてももったいないように思う。かといって、親を忘れて幸せに生きろ、というのも、できるならすでにやっているはずだ。自分で折り合いをつけない限り、先へ進むことはできないのだろう。

 心の大半に「親」が居座っていると、今の生活に気が回らなくなっていく支障もあると思う。29歳の青年は居候生活をしていたが、彼女が妊娠し、どう見ても居候のままでは今後暮らしていけない状況でも、家を出る決断を下せずにいた。一方、みずきは部屋中にゴミが堆積していて、友人・みくが明らかにゴミだと判断して捨てているものすら気になり、確認せずにはいられないようだった。

 親との間に残った禍根は、その子どもの未来や現在に、さまざまな影響を玉突き事故のように起こしているように見える。しかし、彼らの親が改心するとも思いにくく、また、万が一謝られたとしても、それで十数年来の禍根が水に流せるものなのだろうか、とも思う。親へのわだかまりを残し生きる20代の二人は、10年後、どんな30代になっているのだろう。

潜入・ゴミ屋敷
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