“中学受験”に見る親と子の姿

PTA役員の子は「公立中高一貫校で優遇される」……中学受験の都市伝説を信じた母の回顧

2022/07/10 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

「PTA役員の旨味は皆無」と言い切る先輩母も

 ところが結果、大成君は不合格。桃子さんの陰の努力は実らなかった。

「冷静に考えてみれば、親が役員になったら合格が保証されるなんてこと、あるわけないですよね。選抜試験には違いないんですから、やはり、内申点と学力試験の点数が基本。報告書を充実させたいのなら、大成に英語検定を取らせるとか、絵や作文で賞を取るように頑張らせるといったサポートをするほうが、はるかに効果的だったと思うんですけど、当時は『私が本部役員を頑張る道しかない!』っていう、妙な思い込みがありました」

 報告書に花を添えられるような検定資格やコンクールなどの受賞歴は、「あったほうが有利」とはいわれているものの、桃子さんが語るように、やはり公立中高一貫校の合格の決め手は、合格水準を満たす内申(小5~6の成績と学校での学習態度による)と当日の点数。これが全てと言っても過言ではない。それゆえ、中学受検の“都市伝説”を信じてしまう母がいる一方、「PTA役員の旨味は皆無」と言い切り、「ただでさえ忙しい最終学年では、母親は仕事をセーブし、子どもをサポートすべし!」と語る先輩母も多い。

 現在、大成君は地元公立中学の3年生。受験学年を迎えている。ただ、大成君自身が中学受検の経験から学んだことは多かったといい、中学に入ると、人が変わったように各種検定・試験を積極的に受けるようになり、すでに英検準2級を取得済。内申も学区トップ校を狙える位置にいるそうだ。

「大成はもともとマイペースな子なので、逆にあの時、不合格で良かったかもしれません。もし、合格だったとしたら、私は自分の手柄だと勘違いしたかもしれませんし……(笑)」

 現在、大成君の中学でもPTA本部役員をしているという桃子さん。「内申には無関係だけど、自分が楽しいから引き受けた」という。家庭とのバランスを取りながら、上手に任務をこなしているとのことだった。

鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

エッセイスト、教育・子育てアドバイザー、受験カウンセラー、介護アドバイザー。我が子と二人三脚で中学受験に挑んだ実体験をもとにした『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などで知られ、長年、中学受験の取材し続けている。その他、子育て、夫婦関係、介護など、特に女性を悩ませる問題について執筆活動を展開。

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最終更新:2022/07/10 16:00
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