モルモット吉田氏に聞く

『ゴールデンカムイ』はどちらに転ぶ? 映画評論家が語る「マンガの実写映画化」の成功作と失敗作

2022/06/18 16:00
サイゾーウーマン編集部

『帝一の國』も原作の世界観をそのまま実写化

 この「マンガをそのまま実写に置き換えられているか」という点は、現代のマンガ実写版映画における“成功のカギ”になっているようだ。

「『帝一の國』(2017年)がその一つで、原作の独特な世界観をそのまま実写化しており、俳優陣もオーバーアクト。昔は大人がマンガを読む習慣がなかったため、俳優側がマンガのキャラクターをそのまま演じることに抵抗を持つこともあったようですが、今は“マンガ好きの大人”はまったく珍しくなく、そもそも俳優自身が原作のファンというケースも。加えて『2.5次元』文化が一般的になった影響もあってか、『マンガの実写版では、こういう演技をするものだ』といった意識を持っている俳優が多いんです。これは、若手俳優のインタビューをすると、よく感じますね。最近は、演じる側の意識によって、“実写化が割合うまくいった”という作品が、結構あるのではないでしょうか」

 一方、『帝一の國』と同じ古屋兎丸氏原作の『女子高生に殺されたい』(22年)も成功例であると吉田氏。マンガ原作ならではの「虚構」と、それを実写化した際に求められる「リアリティ」のバランスがうまく取れていたといい、監督/脚本を務めた城定秀夫氏の判断力が光った作品といえるそうだ。

『ルパン三世』の問題点は、浅野忠信の演技

 では逆に、“失敗”だったと感じる人気マンガの実写版には、どのような作品があるのだろうか。吉田氏は、先に挙げた「マンガをそのまま実写に置き換えられているか」という観点から、『キューティーハニー』(04年)、『CASSHERN』(同)を挙げた。

「最近はCG技術の進化により、原作の世界観を再現しやすくなりましたが、両作品が公開された約20年前は、『CGにどれだけの予算をかけられるか』が、マンガの実写化作品の完成度を左右していました。『キューティーハニー』も、当初の構想に見合うだけのCG予算をかけられず、虚構とリアリティのバランスが非常に悪くなってしまい、マンガの世界観を十分に実写化できなかった。一方『CASSHERN』も、本来『この予算ではできない』という壮大な話を、質が下がってでも無理やりCGを駆使した結果、賛否が分かれる作品になってしまったと思います。ただ『CASSHERN』に関しては、その“無理にでもやり通した”というところが、個人的には好きなのですが(笑)」

 しかし、CGに予算をかけ、原作を見事に映像化すれば、“必ず”成功するとはいえない面もあるという。例えば、CG分野の出身である山崎貴監督の作品『SPACE BATTLESHIP ヤマト』(10年)などは、「CGにソツがなさすぎて、逆に引っ掛かりがない」という現象が起こっていたそうだ。実際、同作の世間的な評価はイマイチだっただけに、マンガの実写化は、一筋縄ではいかないことがうかがい知れる。

 一方で、俳優陣の演技によって、失敗に傾いてしまった作品もあるそうだ。

「『ルパン三世』(14年)は、ルパン三世役の小栗旬、石川五ェ門役の綾野剛は、『これはマンガの実写版だから』と振り切った演技をしていたのですが、銭形警部役の浅野忠信には恥じらいを感じてしまい、見ている側もどこか乗り切れなかった。また、『鋼の錬金術師』シリーズに関しても、『俳優陣は、よくこのデフォルメされた世界観で、堂々と演技ができるものだ』と感心したものの、(ヒロイン・ウィンリィ役の)本田翼だけが『本田翼だった』というのは気になりましたね」

ゴールデンカムイ 30
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