仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

『上田と女が吠える夜』馬場ももこの女子アナ妬みトークが「ヘタクソ」だと思ったワケ

2022/06/02 21:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

写真ACより

<今週の有名人>
「身の丈に合わない」馬場ももこ
『上田と女が吠える夜』(日本テレビ系、5月25日)

 先月、BPO(放送倫理・番組向上機構)が「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティ」に関しての見解を発表した。一部を抜粋すると、以下の通りだ。

「『他人の心身の痛みを嘲笑する』演出が、それを視聴する青少年の共感性の発達や人間観に望ましくない影響を与える可能性があることが、最新の脳科学的及び心理学的見地から指摘されていることも事実であり、公共性を有するテレビの制作者は、かかる観点にも配慮しながら番組を作り上げていくことが求められている」

 BPOは検閲機関ではないが、影響力があることも事実である。その昔、『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)に「全落・水落オープン」なるコーナーがあった。番組側が落とし穴を掘り、何も知らないゲストをそこまで誘導し、落とし穴に落ちる様子を笑うという内容だったが、今後はああいう企画を見ることはなくなるのではないか。

 テレビはコンプライアンスを強化しているし、視聴者のハラスメントに対する視線も厳しくなっている。こうなると、タレント自身も、「人を笑う」方向から、「自分を笑う」方向にシフトするのではないだろうか。

 すでにその傾向は始まっていて、その先駆けは、バイオリニスト・高嶋ちさ子だと思う。彼女がバラエティに進出した際のウリは、主に「キレやすい」「肉が大好きで野菜を食べない」「異常なせっかち」というキャラクターだった。「キレやすい」というキャラは、キレた相手のリアクションも含め、「人を笑う」タイプのエピソードが生まれがちであり、またパワハラに該当する可能性もあるからか、近頃は引っ込めたように見える。一方「肉が大好きで野菜を食べない」「異常なせっかち」というのは、「自分を笑う」に適したキャラだろう。これにより高嶋は、人を傷つけずに笑いを生みだすことができている。

 「異常なせっかち」を例に挙げよう。高嶋は、焼肉屋に向かっている際、道を歩きながら注文をし、店に着いたと同時に食事ができるようにしておくとか、箸を口から抜くのを待てずに咀嚼して、箸を折ってしまったとか、自分の体が完全に車内に入っていないのに車のドアを閉めるため、青あざが絶えないなどのエピソードを持っているが、これらはすべて「自分を笑う」ものであり、誰も傷つけない笑いになっている。

 さらに、彼女が全国各地でコンサートを開催するバイオリニストで、2人のお子さんがいるお母さんであることから、「そんなにせっかちなのは、バイオリンの練習と子育てのため」という、これまた誰も傷つけない“いい話”に変えることもできる。

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