【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

雅子さまに向けられた「常磐会」の視線ーー皇后の座をめぐる「学習院VS聖心女子VS東京大学」の混戦

2022/06/04 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

「皇族はスーパースター」と語る歴史エッセイストの堀江宏樹さんに、歴史に眠る破天荒な「皇族」エピソードを教えてもらいます! 

――前回は学習院高等科を卒業した女性だけが入れる同窓会組織「常磐会」のお話をしていただきました。歴代の皇后陛下を輩出してきた組織とのことで、聖心女子出身の美智子さまが登場した際には、相当なアンチ活動を行っていたとか……。それだけに、浩宮さま(現・天皇陛下)のお妃こそは常磐会会員から、という悲願があったようですが。

堀江宏樹氏(以下、堀江) しかし、結果はご存じのように常磐会ではありませんでした。当時の週刊誌を調べたら、東大出身の雅子さまはダークホースだったようですね。

 美智子さまの時代の争いは「学習院VS聖心女子」でしたが、雅子さまの頃には東大が加わり、三つ巴の混戦状況になっていたのがわかります(笑)。この「貴族(学習院)VSその他」という対立構図は、美智子さま時代から引き続き、受け継がれていました。

 昭和61年(1986年)5月1日号の「週刊サンケイ」に掲載された記事は、その名も「学習院VS聖心の争いを尻目に 東大生・徳川冬子さんが浩宮妃に選ばれる確率」。「名門、徳川家の出身で大学教授の父母を持つという理想的な家庭環境」の徳川冬子さんが「“最有力”の名に恥じない令嬢」として紹介されています。当時の徳川さんは、東京大学文学部史学科3年に在学中で、ご両親はともに大学教授というお血筋でも、頭脳の点でもエリートな方でした。

 ちなみに、浩宮さまのお相手選びは宮内庁がかなり熱心に行っており、「かつて東宮侍従を務め浩宮殿下の教育担当でもあった浜尾実氏」によると、「浩宮さまの大学卒業時には数百人いた候補の女性が、(今や)数十人に絞られた」という事実を認めています。

――秋篠宮さまが、紀子さまを自力で見つけたのとはかなり違うんですね。

堀江 しかし、現天皇陛下はこの当時から「自分で結婚相手を選びます」と公言なさっていました。要するに宮内庁が、おせっかいな親戚みたいに女性を押し付けてきていたようです(笑)。そしてその中に徳川冬子さんが含まれていた、という感じでしょう。

 興味深いのは、雅子さまも東大卒、ハーバード大学留学経験を持つエリートでいらっしゃいましたけど、そういう浩宮さまの“お好み”を宮内庁はちゃんと掴んでいたことですね。そして、それでも当時の宮内庁はやはり、旧華族の令嬢をプッシュしたかったのかもしれません。

――東大の徳川冬子さんがうわさになった時、「浩宮妃はウチから!」と息巻いていた学習院の常磐会はどういう反応を?

堀江 それが面白いんです(笑)。コメント主の名前が書かれていないのが残念ですけど、とある常磐会会員は「徳川さんは(略)東大生といっても、学習院高等科出身ですから常磐会員なんです」と、徳川さんが“身内”だとアピール。一方で、聖心女子大卒業生の「宮代会の有力会員」は、「私どもは本当に(学習院などへの)対抗意識はないんです」。

 ちなみに、こういうお妃候補は、名前が世間に出た人は選ばれないというジンクスがあるようで、結局、徳川さんもそういうことになってしまいましたね。徳川さんはご結婚なさって松方さんとなられ、現在、東京大学史料編纂所の准教授として研究者の道を歩んでおられます。

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