『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』ヤングケアラーとしての日々の終わり「NYフェスティバル2022受賞記念 ボクと父ちゃんの記憶 ~別れのあと 家族の再会~」

2022/05/16 18:18
石徹白未亜(ライター)
写真ACより

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。5月15日の放送は「NYフェスティバル2022受賞記念 ボクと父ちゃんの記憶 ~別れのあと 家族の再会~」。

あらすじ

 2021年10月に放送された同作と、家族の「その後」について伝える。昨年の放送内容は、国際メディアコンクール「ニューヨークフェスティバル」のドキュメンタリー・普遍的関心部門で銅賞を受賞した。

千葉県南東部、緑豊かな睦沢町で暮らす高校3年生の大介は、若年性アルツハイマー型認知症になった父親を日常的に介護している「ヤングケアラー」だ。

 大介の父親、佳秀はもともと東京で映像制作の仕事をしており、多忙な日々を送っていた。1999年、43歳で再婚したときから、大切な約束を忘れてしまうなど仕事でミスが出始めたという。

 2003年に大介が産まれるが、このころには車で出勤したのに、それを忘れ電車で帰ってくるなど日常生活にも影響が出始める。大介が2歳、佳秀が50歳の時に若年性アルツハイマー型認知症と診断される。

 病気の進行を遅らせるため、一家は千葉に越して仕事を減らす。大介が幼いころは心身とも安定していた佳秀だったが、大介が中学校、大介の下の妹たちが小学校に上がるころから、症状は坂道を転がるように悪化していく。

 21年夏、取材を始めたころの佳秀は、会話がほぼ成り立たず、トイレも一人で行けないため日中はデイサービスに通っていた。機嫌のいいときはにこやかだが、唐突に腹を立てることもある。妻・京子が働いて一家を支えており、仕事で帰宅が遅くなるときは、大介が佳秀を寝かしつける様子も映されていた。

 京子は大介を介護の助け手にしていることに悩んでおり、佳秀を受け入れてくれる施設を探す。しかし、コロナ禍の状況であり、さらに、コロナがなくてもインフルエンザなどの感染症を防ぐため、希望する施設は11月から4月までは面会謝絶だという。

 一度、施設に入れたら、もう佳秀から家族の記憶は完全になくなってしまうだろうとためらいもあったようだが、京子は施設に入れることを決断する。

 京子の決断を聞いた大介は、「(佳秀には)入ってほしくはなかったけど、お母さんが限界だからね」と、便まみれになっていた佳秀を京子が介護していたことをスタッフに話す。

 21年夏、施設に行く当日、涙をこらえハンドルを握る京子と、父親を見つめる大介の横で、状況を把握できていないのであろう佳秀はただニコニコしていた。

 施設に預けてから半年以上がたった22年5月。佳秀の誕生日に家族はケーキを差し入れしようと施設を訪ねる。コロナ予防のため直接の面会はかなわなかったが、談話室のような場所にいる佳秀とガラスサッシ越しに再会ができた。ただ、佳秀が目の前にいる人々を家族と認識できたかどうかは、今一つわからない状況だった。

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