“中学受験”に見る親と子の姿

いじめが原因で中学受験! 人生をガラリと変えた「偏差値40台」の中高一貫校とは

2022/05/08 16:00
鳥居りんこ(受験カウンセラー、教育・子育てアドバイザー)

“親子の受験”といわれる中学受験。思春期に差し掛かった子どもと親が二人三脚で挑む受験は、さまざまなすったもんだもあり、一筋縄ではいかないらしい。中学受験から見えてくる親子関係を、『偏差値30からの中学受験シリーズ』(学研)などの著書で知られ、長年中学受験を取材し続けてきた鳥居りんこ氏がつづる。

写真ACより

 中学受験の志望動機をさまざまなご家庭に聞いているが、その中に「現状をリセット」というものがある。

 この場合、決められている学区中学ではなく、中学受験を経て「新天地」を目指すということ。そのほとんどが、我が子の小学校生活に危機感を持っての「中学受験」なのだ。

 美月さん(仮名)のケースもこれに当たった。小学5年生でクラス替えが行われた際に、美月さんは仲良しの子たちとは別々のクラスになってしまったとのことだが、ゴールデンウィーク後には、クラス全員から無視されていることに気付いたのだそうだ。

「誰かとけんかをしたわけでもないんですが、本当にわけがわからないまま、みんなが私を避けている感じがしました。班行動で私が入ることになると、明らかに嫌そうな態度を取られたり、陰でクスクス笑われたり……。そのうちに『あの顔でよく生きてるね』って声を聞いてしまって、学校に行けなくなりました」

 当然、美月さんの両親は心配し、学校側とも話し合いの場を設けたりもしたそうだが、進展もないまま月日だけが過ぎていったという。

 やがて、美月さんは不登校のまま6年生になるのだが、その時に美月さんの母親が「中学受験をしてリセットしない? 理由もなく、人を虐める人間とは華麗にさよならしようよ?」と提案してくれたのだそうだ。

「その頃の私は、中学受験という選択肢があるということもわかっていなかったんですが、『このままじゃ嫌だな』とは思っていたので、母の言うように『リセットできるならしたい』と決めて、受験することにしたんです」

 当時、美月さんは外に出るのも恐怖を感じるような状態だったようで、塾には行けず、家庭教師をお願いしての受験勉強。1年間を切る受験生活ながらも、偏差値40台前半のミッション系の中高一貫校に合格。新たなスタートを切ることになった。

「学校は自宅から1時間以上はかかるところにあるので、当然、誰も知っている人がいないと思って入学したんですが、いたんですよ、小学校の同級生が……。幸いクラスは別だったんですが、その子が私のことを何か言っているんじゃないかって思って、気が気じゃなくて。誰かがヒソヒソ声でしゃべっていると、私の悪口を言っているような気がして、消えてしまいたくなりました」

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