オンナ万引きGメン日誌

「やられた!」目の前で煙のように消えた万引き犯――ベテランGメンが執念の追跡で捕まえた犯人の正体!

2022/05/14 16:00
澄江(保安員)
「やられた!」目の前で煙のように消えた万引き犯――― ベテランGメンが執念の追跡で捕まえた犯人の正体!
写真ACより

 こんにちは、保安員の澄江です。

 新型コロナウイルスの蔓延防止対策による行動規制は終わり、街の雰囲気も段々と活気づいてきました。どこの街に行っても、人出の増加を実感するほどで、商店も客足を取り戻しつつあるようです。

 かといって、景気が良くなったわけではないので、私たちの仕事に変わりはありません。仕事を失い、食うに困って弁当や惣菜を盗む人も減ることなく、犯行を繰り返すことで生き延びているような状態に陥っている人が散見されます。

 生活費の節約を目的に万引き常習者と化した主婦は、年齢を問わず幅広く潜在しており、換金目的の犯行にまで手を染める者が増えました。生き残るためにと、家族総出で犯行に及ぶ「万引き一家」も増加傾向にあるようで、親の指示でやむなく犯行に加担したと涙ながらに告白する小学生を捕捉したときには、その非情な環境に触れて涙が止まらなかったです。

 コロナウイルスによる経済停滞やロシアのウクライナ侵攻、さらには急激な円安に追い打ちをかけられた日本経済は、いつになったら落ち着くのでしょうか。景気が悪くなるほど、街の治安は悪化していくので、早期回復を期待するばかりです。

 今回は、コロナ不況で増加傾向にある内部不正事案について、お話ししたいと思います。

大型ショッピングモール、カツサンドを持った不審な女性

 当日の現場は、東京の外れに位置する大型ショッピングモールD。広大な駐車場と売り場面積を誇る人気店です。この日の勤務は、午前11時から午後7時まで。ここ数年、毎月のように入っている現場なので、店内把握(店内構造を熟知すること)の必要はありません。早い時間は、お客さんの流れがある食品売り場を中心に巡回することにして、ランチ目当ての来店客に紛れて周囲の警戒を始めます。

「あの女(ひと)、大丈夫かな?」

 およそ30分後、有名店のカツサンドとパック入りのサラダ、それに透明の容器に入ったスムージーを手にしたショートカットの女性が、化粧品売り場に入っていく姿が目に留まりました。カゴを持つことなく、商品を直接手に持って抱え歩く姿に、妙な違和感を覚えたのです。

 おそらくは仕事中なのでしょう。一見して20代前半くらいに見える女性は、白いポロシャツに黒パンツといった服装で、休憩前の買い出しに来られたような雰囲気です。すると、化粧品売り場でリップスティックを棚取りした女性は、それをカツサンドの上に載せてレジ方面に向かって歩いていきました。

 不審感が拭えず、精算完了まで遠目から見守ることにすると、レジ列を避けて多くのテナントが軒を連ねる専門店街に向かって歩いていくので、慌てて後を追いかけます。すると、正面から異臭漂うホームレス風の男性が現れました。職業柄、自然と目を奪われ、その隙に女の姿を見失ってしまいました。

万引き
貧しさが人を追い詰める恐ろしさ……
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