『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』こだわりと意地の境界線「泣かないでアコーディオン ~シングルマザーの大道芸人~」

2022/04/11 19:48
石徹白未亜(ライター)

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。4月10日の放送は「泣かないでアコーディオン ~シングルマザーの大道芸人~」。

あらすじ

 44歳のあんざいのりえは芸歴23年の大道芸人で、4歳の息子・ろっちゃんと二人、神奈川県川崎市で暮らすシングルマザーでもある。

 東京オリンピック直前の2021年7月。コロナさえなければのりえは五輪関連の仕事で大忙しだったはずだが、収入はほぼゼロの状態で、各種の公的給付金でしのぐ生活が続く。月1回の外食のランチも厳しい状況だと話し、仕事の依頼は来るには来るものの、コロナ禍ではキャンセルになってしまうことが多いそうだ。

 のりえは「『女の子はこういうものだから』っていう社会の押し付けとかが嫌で」「今思えば結局は人と一緒のことができない子だったのかなって」と10代を振り返り、かつては自傷行為がエスカレートしたこともあったという。学生時代、旅行先のバルセロナで見た大道芸人を見て開眼、卒業後から大道芸人として暮らしてきた。

 しかしのりえは35歳でジストニア(脳神経の病気)になり、手術をしたもののアコーディオンが弾けなくなってしまう。その後、結婚するも離婚し、離婚後に妊娠が判明。子どもを一人で育てていこうと再度アコーディオンを手に取る。

 息子のろっちゃんはのりえのパフォーマンス中は横にいて、のりえや顔なじみからは「座長」とも呼ばれている。静岡のイベントでは帽子で投げ銭を受ける係も担っていた。

 上野公園は大道芸人にとって聖地的な場所だが、緊急事態宣言中は大道芸が禁止となった。解除後も、腰を掛けるのにちょうどいい高さの縁石にフェンスが張られて座れないようになっていたり、大通りも中央に分離帯が置かれ片側通行が徹底されるなど、大道芸人にとっては厳しい状況が続いている。

 22年正月、のりえは初詣の客でにぎわう川崎大師の仲見世にある知り合いの店を手伝っていた。一方で、芸幅を広げようとスティルト(竹馬のようなもの。大道芸で見かける足長パフォーマンスで、ズボンの下に仕込んでいる)をつけたままアコーディオンを弾くなど、新しい芸風の模索を続けていた。

こだわりと意地の境界線

 のりえの経済状況について整理すると、収入はほぼゼロで、4種類の公的給付金をやりくりして生活している。元夫からの養育費については番組内で説明がなかったので、もしかしたら受け取っていないのかもしれない。

 そんな生活状況にありながら、同じ川崎市内にある実家にあまり近寄らず、ろっちゃんと二人暮らしをしている。番組を見る限り、のりえの母親ももっと頼ってくれてもいいのに、と思っているようだ。のりえが上野公園で大道芸をしたときに足を運んでいる様子を見ても、親子の折り合いが悪いわけではないのだろう。

 こうした姿を見ていて、のりえは「こうありたい(こうありたくない)」という思い、こだわりが強くある人に見えた。離婚後、妊娠が発覚したときには一人で育てると決めているのも、こうありたいという思いの強さからだろう。

ザ・大道芸
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