『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』新人を叱責する場に居合わす客の気まずさ「新・上京物語2022 後編 ~旅立ちの時~」

2022/03/28 20:13
石徹白未亜(ライター)

『ザ・ノンフィクション』諭すように「正しく」叱っていたとしても……

 スターバックスでコーヒーを飲んでいたとき、新米と思しき店員が何か至らないところが多かったのか、物陰でマネジャーと思しき人に諭されていたのを見たことがある。多くの客からは見えない位置をマネージャーは選んだと思われるが、私がいた隅の席からは丸見えだった。

 そのマネージャーの叱り方は感情に任せたものでも、バカにしたような感じでもなく、愛情をもって論理的に至らないところを諭す「望ましい叱り方」ではあった。諭されていた側も、生意気な態度をとるでもなく、ただただ恐縮していた。

 このときも居たたまれなかった。先ほどのラーメン店よりも「誰も悪くない」感が強く、だからこそ、より居たたまれなかった。漫画『孤独のグルメ』(原作・久住昌之/作画・谷口ジロー、扶桑社)には「モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず 自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ 独りで静かで豊かで……」という名台詞があるが、モノを食べたり飲んだりする時間は、心もほっと救われていたい。人が叱られている横で食べる飯はうまいまずい以前に、喉も胃も悲しくてきゅっと縮んでしまう。

 さて、今回で「ヒール役」の七久保は退職となった。この状況ならば、案外千春は厨房で働けるのではないか、とも思う。

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