『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』新人を叱責する場に居合わす客の気まずさ「新・上京物語2022 後編 ~旅立ちの時~」

2022/03/28 20:13
石徹白未亜(ライター)
写真ACより

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。3月27日の放送は「新・上京物語2022 後編 ~旅立ちの時~」。

あらすじ

 初就職する若者の姿を見つめる、毎年春の人気シリーズ「新・上京物語」の2021年度版。21年4月、浅草に本店のある洋食店「レストラン大宮」に3人の新人が入る。栃木県の高校の調理科を卒業した千春と楽壱(らいち)、そして彼らより1つ年上で、茨城県出身で、調理師専門学校を卒業したあかりだ。

 楽壱、あかりは厨房配属となったが、千春の配属はホール。数カ月おきに持ち場は変わるローテーションだと言われていたものの、調理の経験を積んでいく2人を横目にホールのままの千春は焦燥感を募らせる。

 21年11月、ようやく千春は念願の厨房配属となったが、新丸ビル店を仕切る9年目の26歳の七久保から叱られる日々が続き自信をなくしていく。レストラン大宮の大宮勝雄シェフは「ヒール役がいないと若い子は伸びない」と七久保の立場を理解しつつ、一方で「難しいですよね、新人を育てるというのは」とも話す。

 そんな七久保自身も、新人の頃はお客さんの前で直立不動状態になってしまい、叱られながら育ってきたという。

 七久保はレストラン大宮入社時の履歴書で、将来は食の外交官、つまり公邸料理人(海外にある大使、総領事館で働く料理人)になりたいと夢を書いており、今も夢のため、昼休みは店の片隅で英会話レッスンもしている。レストラン大宮は公邸料理人を過去に15人輩出しており、大宮シェフはその公邸料理人のOBを店に呼び、七久保と交流の機会を設ける。

 公邸料理人は赴任先の海外で、大使への日々の食事の提供にとどまらず、限られた予算でパーティーを取り仕切ることも要求される。日本食を出すと喜ばれるように思われるが、外国には寿司が苦手な人もいるのだ。

 そうしたゲストの嗜好について大使秘書に確認したり、さらにベジタリアンに対応したメニューを用意したりもする。ほかにも、パーティーの規模によっては、ウエイターを予算内で雇ったりなど、レストラン大宮で働いていたころとは異なるさまざまな動きが求められる。新丸ビル店では堂々たる責任者の七久保も、OBの話を聞いている時は新たな世界を前に緊張した面持ちだった。

 大宮シェフは、七久保に公邸料理人の推薦状を用意し、実際の面談では七久保が調理した料理を雇い主となる総領事に提供した。結果は無事合格。赴任先の国はセキュリティ上の都合とのことで番組内では明かされなかった。

 一方、自信をなくしていた千春は、当初は不本意であったホール業務のほうが自分には合っているかもしれないと大宮シェフに打ち明け、番組の最後ではホールのプロを目指してワインを勉強する様子も伝えられていた。

憎まれ役/野中広務
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