オンナ万引きGメン日誌

ママは万引き犯! 幼い我が子の前で24点を窃盗……「警察に相談します」店長が怒りの通報

2022/03/12 16:00
澄江(保安員)

万引きママに「あの女、前が大麻じゃなかったら、子どもらと家に帰れたんだけどね」

 ひどく困惑した様子で、子どもたちと私の顔を交互に見た店長が、犯行の理由を改めて問い質しました。

「こんなにたくさん盗って、そう簡単には許せないわよ。どうして盗ったのか、理由があるなら聞いてあげるから、言ってごらんなさいよ」
「実は、旦那が逮捕されちゃって、どうしていいかわからないんです。働くにしても、子どもを預けられるところなんてないし、助けてくれる人なんて誰もいなくて……」
「だからって、盗ったらダメでしょ。ここで見逃しても、あなたは同じことするほかないわよね? 子どもたちのためにも、警察に相談します」

 結局、警察に引き渡された女は、その場で逮捕されることになりました。別々のパトカーで所轄警察署に向かい、調書作成のため刑事課の取調室に案内されると、ずいぶんとフレンドリーな初老の刑事が担当でした。ベテランながらも、あまり仕事ができそうにない感じのする人で、着席すると同時に被疑者の背景を話しはじめました。

「あの女、前が大麻じゃなかったら、子どもらと家に帰れたんだけどね。旦那もお勤め中だし、パクるほかないよ」
「子どもたちは、どうなるんですか?」
「とりあえず児相(児童相談所のこと)だね。ちゃんとした親族が身請けして、面倒見てくれたらいいけど、世の中の状況も悪いから難しいよな」

 午後11時過ぎ。逮捕手続きを終えて警察署を出ると、すっかり寝入ったらしい子どもたちを抱きかかえた職員が、どこに行くのかワゴン車に乗り込むところを見ました。母娘を引き裂く結果を招いた自分の仕事に、嫌気がさしたのは言うまでもないでしょう。

(文=澄江、監修=伊東ゆう)

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澄江(保安員)

澄江(保安員)

万引きGメン(保安員)歴40年以上。スーパーで品出しのパートをしている時に、万引き犯を捕まえたことがきっかけで、この世界に。現在も週5日は現場に立っている。

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最終更新:2022/03/13 13:00
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親の身勝手な行動で不幸になる子どもたち
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