【連載】わが子から引き離された母たち

出産した息子と25年前に生き別れに……10歳年上の芸術家と結婚、62歳女性の悲劇

2021/12/30 11:00
西牟田靖

息子のアトピーをきっかけに夫から怒鳴られるように

――なるほど、関西を離れて、Bさんの実家に同居し、そののちに出産したのですね。

 そうです。出産後、助産院で1週間過ごした後、Bの義母にもいろいろ世話になりながら新生児時期の子育てをしました。

 暮らしてみてわかったんですけど、Bは強烈なマザコンでした。母子が密着したまま、大人になったような人だったんです。しかも、子どものことは全部私に責任を押し付けてくる。例えば子どもが寝汗をかいて肌が荒れたら「お前のせいだ」と怒鳴られる。

――お義母さんはどんな人ですか? お互いの関係は?

 Bの住んでいた県はアパレルが盛ん。義母は朝テキパキと家事をこなしてから、アパレル関係の仕事場に向かっていました。すごく働き者。義母が家事を一切やってくれるので、すごく楽でした。「あんたは子どもだけ育てておけばいい」と言って実際、楽をさせてくれました。

――お義母さんが働き者でよかったですね。

 でも、生後3カ月で症状が出てきた息子のアトピーのことで、義母やBともめるようになったんです。医師が処方してくれたステロイドが劇的に効きすぎて、びっくりしちゃった。これだけ効き目があるのは、むしろ体に危ないんじゃないかって思ってしまって。だったら、私の体質を改善して、質のいい母乳を飲ませて、息子のアトピーを治してみようと。そのころBは一緒にアトピー専門の病院にも行ってくれました。

――食事療法にこだわったんですね。そうすると檀さんの日々の食事を変えていかなきゃならないのでは?

 そうなんです。でも、Bや義母と一緒に食べていたものが食べられなくなる。それで、彼がどんどん不機嫌になっていったんです。「なんだその宗教みたいな治療法は」と怒鳴られるようになりました。

 でもそうして、価値観が合わないからといって怒鳴られ続けることに嫌気が差してしまって、夜の営みを拒否するようになった。すると彼はますます攻撃的になってしまって。その果てに、「お前はキ〇〇イだ」と罵倒され、精神科に行くことを強要されました。

子どもを連れて、逃げました。
子どもはどんなきもちだったんだろう……
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