オンナ万引きGメン日誌

「子どももいるのでお願いです。助けてください!」示談金を押しつける万引き主婦の恐るべき執念

2021/11/13 16:00
澄江(保安員)

菓子折りを持ち店内をさまよう女

 開店から数分が経過したところで、40代くらいにみえる化粧気のない痩せた女性が、菓子折りが入っているであろう紙袋を持って店内に入ってきました。商品に目をやることなく、何かを探すように店内を歩き回るので気にしていると、バックヤードから出てきた店長をみつけて駆け寄っていきます。

(あの人か。やっぱり来たのね)

 あからさまに嫌な顔をして周囲を見回す店長と目が合い、手招かれるままそばに行くと、苦悶の表情を浮かべた女性が店長の袖をつかんですがりついていました。

「すみません。これから会議なんで、この人とお話してもらっていいですかね。全部話してあるから」

 ひどく冷たい目で女性を振り切り、その場を離れた店長は、私に目くばせをしながら立ち去っていきます。ぼちぼちとお客さんも入ってきたので、バックヤードの応接室に女性を案内して、二人きりで話すことにしました。期待を持たせても酷なので、開口一番、単刀直入に断りを入れます。

「ごめんなさい。お話は伺っているんですけど、本部の意向があって、謝罪はお断りしているんですよ」
「それは、店長さんから聞きました。でも、私、刑務所に行くことになっちゃうかもしれなくて」
「でも、そうなることわかって、やったことですよね。そんなことを言われても困ります」

 そう突き放すと、無表情のまま泣き始めた女性が、小さな声で言いました。

万引き
やんなきゃいい
アクセスランキング