『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』男親の正論と女親の意地「奇跡の夏に輝いて ~ピュアにダンス 待寺家の18年~」

2021/10/25 18:30
石徹白未亜(ライター)
『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

 日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。10月24日の放送は「奇跡の夏に輝いて ~ピュアにダンス 待寺家の18年~」。

あらすじ

 番組が18年取材を続けている、神奈川県小田原市で動物病院を営む待寺家。待寺家の3人兄弟の末っ子、優は生後1カ月でダウン症が判明する。母の幸は当初、優の「顔を見たくなかった」ため、奥の部屋にほったらかしにしていたこともあったと、「今考えるとかわいそうですけど」と涙ながらに話す。

 合併症で心臓疾患もあった優は生後9カ月で呼吸が止まり、緊急手術の末に生還する。そのときのことを父、高志は「生涯何があっても、この子と一緒に生きていく」と決意したと振り返る。

 優は13歳でダンスに出会い、ダウン症のある人のためのエンタテイメントスクールLOVE JUNX(ラブジャンクス)の中で頭角を現していく。逆立ちをした状態で脚を巧みに動かす優のダンスは「障害者のダンス」と聞くとイメージされがちなものとは一線を画しており、ダウン症患者は筋力が弱い、というそれまでの定説を覆すものでもあった。

 優はセンターポジションで踊るようになり、活動の幅を広げていくが、「ダウン症のダンサー」という言葉が前に出るのを嫌がり、一時ダンスから遠ざかる。しかし、再びダンスに戻り、幸の送迎で小田原から東京に通う日々を送る。

 現在、優は31歳。ダンサーとしてのピークは過ぎ、LOVE JUNXのセンターポジションも今は若手だ。できるだけダンスをやらせたい幸と、自分たち親が亡きあとも、優が一人で生活できるように自立の準備をしてやりたい高志の間で、意見が食い違う日々が続く。そんな2人の空気を読んだ優も、自ら皿洗いを始める。

 ある日、憧れのダンサー・植木豪(Pani Crew)から、優の人生をテーマにしたダンス舞台の出演オファーが来る。トップダンサーたちの動きに当初ついていけない優だったが、懸命な練習で食らいついていく。

 舞台の初日は2020年3月24日。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2月26日には政府からイベントの中止要請が出る。優の舞台も中止となり、幸は涙し、優は何も言わずに舞台で使われる予定だった歌を歌い続けていた。その後、8月の再演が決まる。

 また、優は東京パラリンピックの開会式でのパフォーマーに採用されたが、新型コロナの影響で1年延期される。開会式が迫る中、新聞の一面では開催反対の都民が60%と書かれており、逆風の中での開催となったものの、優は無事に大舞台でダンスを成功させた。ギタリスト・布袋寅泰も参加するロックショーのダンサーで、ソロもある大役だ。

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マシンガントークは心を無にして流すとよし
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