オンナ万引きGメン日誌

最先端AIの目は万引き犯を見つけられるのか? ベテランGメンとの対決の結果はいかに――

2021/10/23 16:00
澄江(保安員)

不審者検知の知らせに右往左往……

 この日の勤務は、9時から17時まで。

 平日のため店内は閑散としていますが、客足は少ないながらも絶えることなく、気を抜ける状況にまで至りません。すると間もなく、先ほど渡されたスマートフォンにメールが届きました。すぐに開封すると、米売場にいる女性の姿が映る画像が表示されたので、早足で駆けつけて状況を確認します。

 そこには、下段の棚に陳列される10キロの米を、しゃがんで選ぶ老女の姿がありました。そのまま見守ると、少し苦戦しながら米をカートの下段に載せた老女は、レジに直行して支払いを済ませています。

(昔と変わらず、しゃがんだことに反応したのかしら……)

 気を取り直し、巡回を再開してまもなく、今度は化粧品売場に写る中年女性の写真がメールで送られてきました。すぐそばにいたので迂回してみると、当該女性は乳液や化粧水のテスターを試用しており、しばらく悩まれた後、しっかりとお買い上げになられて退店されます。

 その後も、たびたびメールが届きましたが、一人ひとり確認しても万引き行為に至るような不審者ではありませんでした。不審者検知システムは発展途上の段階にあるようで、お客さんが売場にいることを従業員に知らせて駆けつけるような接客支援には向いているかもしれませんが、売場従業員数が不足しがちな商店における有効利用は難しそうです。

(人が来るたびに鳴らされても、ペースが乱されるだけよね)

 もうメールは無視することにして、いつも通りに巡回すると、しばらくして濃い化粧を施した40代と思しき痩せた女性が目に止まりました。

万引き
AI技術の限界を感じる……
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