オンナ万引きGメン日誌

「お父さん、助けて!」顔認証システムで捕まった万引き老女を警察が逮捕しない理由とは?

2021/10/09 16:00
澄江(保安員)

万引き犯特有の挙動をひとつも示すことなく隠匿した80代の老女

 二手に分かれて追尾をすると、鮮魚売場で足を止めた女性は、そこで手にしたサケの切り身と真鯛の刺身を、カゴの中にある自分のバッグに躊躇なく入れてしまいます。堂々と商品を隠匿する姿は、慣れた手口を用いているようにも見えますが、万引き犯特有の挙動をひとつも示すことなく隠匿したところをみれば、認知症の方だという話に合点がいきました。女性の向こう側で、隠匿行為を確認した警備隊長と歩調を合わせ、挟み撃ちする形で声をかけます。

「いとうさん(仮名)、こんにちは」
「へ?」
「ちょっと、こっち来てもらっていいですか」
「あんたたち、なんだよお」

 ちょっとお話があると宥めながら、すぐそばにある調理場に通じるドアに女性を押し込み、関係者専用の通路を通って防災センターの応接室まで連れていきます。その道中、カゴにあるバッグの中を上から覗きみると、先程隠した商品の下に大きなトマトがあるのも確認できました。

「ねえ、いとうさん。私のこと、覚えていますか? ついこないだ、もう入ってきたらダメって、お約束した者だけど」
「いやあ、ちょっとわからないねえ。なんで入ってきちゃダメなのよ?」
「お金払わないで、持っていっちゃうからでしょ! そのバッグの中に入れたらダメだって、前にも約束したじゃない。それ、一回全部出してよ」

 バッグに入れた商品を出すのを手伝い、トレーニングレシートで合計額を出してもらうと、有機栽培トマトを含めた計3点の合計は1,600円ほどになりました。現認のとれていないトマトは除外するよう進言すると、防犯カメラの映像で立証できたというので、それもあわせて請求します。

万引き
超高齢化社会の哀しい側面
アクセスランキング