『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』の執筆陣と考える(前編)

「推しの日本語がかわいい」「兵役に行かないで」“韓国好き”の人は無意識の加害者?

2021/10/04 14:00
小島かほり

韓国との問題は歴史認識の違いではなく、人権の問題

――本の中で熊野さんが「歴史を知らずにいられたのは日本人である特権だ」と内省している箇所にハッとしました。私は普段、ジェンダーの問題について「女性の置かれた状況や苦しみを知らずにいられるのは男性特権だ」と思っていたことが、朝鮮の歴史に関していえば私が特権を持つ側になってしまう。ですから、いろんな角度から学び続ける必要があるなと感じました。

牛木 上の世代と話すときに、うまくかわされたと感じることが多いんです。例えば「大学で朝鮮の歴史を学んでいます」と言うと、一瞬間を置いたあとに「大切な問題だよね」と。本当に大事な問題と思っているのかなと感じます。また、一人ひとりの意識が集まって社会が形成されるはずなのに、親世代からは自分たちが社会を作っているという意識を感じない。政治に対しても「どうせ変わらない」と思っているんだなと感じます。そしてそれが下の世代にも伝播している。もっと社会の当事者として連帯していきたいです。その点では、この本の感想として、親世代が「子どもと一緒に読んで、学んでみたい」という声を寄せてくれていたことがあって、とても心強く感じました。

朝倉 本の中でも例に挙げたんですけど、親世代や祖父母世代の朝鮮人に対する差別的な視線を若い世代が感じ、影響を受けてしまうことがあります。今は書店に行っても嫌韓本のほうが多く並んでいるような状況ですが、親世代であっても学ぶことはやめないでほしいし、韓国との問題は歴史認識の違いではなく、人権問題だと理解してほしいです。

熊野 確かに、親の影響って大きいので。密な関係の中で話し合うのが一番難しいとは思うんですけど、歴史やジェンダーについて家族で話すのは、すごく大きなアクションだと思います。ですから、この本がきっかけとなってくれればすごくうれしいです。

※4 関東大震災発生後に、「朝鮮人が放火した」「井戸に毒を入れた」などのデマが広がり、発音から朝鮮人と判断された人(日本人や中国人を含む)が軍、警察、民衆によって虐殺された。犠牲となった在日朝鮮人は数千人ともいわれる。

※5 2014年に起こった、大型客船沈没事故。政府の指揮を執るべき朴槿恵(パク・クネ)前大統領に「空白の7時間」があったり、海洋警察の動きが遅れたり、船長が避難誘導せずに真っ先に下船したりとさまざまな要因が絡まり、大事故へとつながった。修学旅行中の高校生ら304人が死亡・行方不明となっている。

※6 オーストラリアの歴史学者(専門は日本近代史)テッサ・モーリス=スズキ氏が提唱した概念。詳細は『海を渡る「慰安婦」問題――右派の「歴史戦」を問う』(岩波書店)参照。

最終更新:2021/10/04 14:00
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