『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』の執筆陣と考える(前編)

「推しの日本語がかわいい」「兵役に行かないで」“韓国好き”の人は無意識の加害者?

2021/10/04 14:00
小島かほり

「韓国人になりたい」と書いていることにモヤモヤする

――ほかの方で、韓国カルチャーを愛するときに気をつけていることは?

朝倉希実加さん(以下、朝倉) やっぱり歴史を知るということは、すごく大事だと思います。私は韓国コスメについてインスタグラムでよく情報収集をするのですが、同じように韓国コスメ好きな人が「韓国人になりたい」と書いていることにモヤモヤします。日本が朝鮮人を文化的に劣っているとして見下し差別してきた歴史があり、今の日本社会を見ても、韓国人や在日朝鮮人への差別もなくなっていない。それを無視して、韓国人アイドルの顔が好きだから「韓国人になりたい」と言ってしまうことに暴力性を感じる。韓国流のメイクがはやるのが悪いのではなく、その裏にある問題を意識したほうがいいなと思います。

牛木未来さん(以下、牛木) 日本では昨年、ドラマ『愛の不時着』の人気がすごく高まりましたよね。同作のように朝鮮半島の南北分断をテーマにしたドラマ、民主化運動をテーマにした映画なども人気ですが、歴史を知らずに見ると、ただの感動作として消費されてしまう。南北分断をはじめ、日本の植民地支配が東アジアにどういう影響を与えたのかを見る必要があると思います。また、加害の歴史についてリベラルな考え方を持っている文化人でも、朝鮮民主主義人民共和国を「テロ国家」と言い切ってしまう人もいるし、在日朝鮮人の問題が意識の中にないような振る舞いをする人もいます。

熊野 韓国の民主化運動は軍事独裁政権への抵抗ですが、その軍事政権の中枢には、植民地時代の日本軍に所属していたり、近かった人がいます。日本軍の系譜を引く人への抵抗なので、ひとごとのようにただ「こういった運動が起きるのはすごい」などと言うのは、歴史的文脈を無視した都合のいい消費になってしまいます。好きなアイドルが徴兵されるときも、ひとごとのように「行かないで」と言う人も多い。気持ちはわかりますが、いまだに徴兵制があるのも朝鮮戦争が休戦状態にあるからで、戦争の大本である南北分断を生んだのは日本の植民地支配です。そういった歴史を見ずに、日本人である自分と切り離して考えるのはどうなのかなと思います。

「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし
モヤモヤしたままペン活続ける?
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