『「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし』の執筆陣と考える(前編)

推しの「政治」的な言動に抵抗感があるのは、なぜ? K-POP・韓流ファンは避けられない『日韓のモヤモヤ』

2021/10/03 14:00
小島かほり

事実を認めるという問題解決のスタートライン

――そしてそれらの事実すら、日本の中で共有されていないというのが問題です。

熊野 そうですね。事実を認めるという問題解決のスタートラインにすら立ってないのに……。それに僕は、非常に強い危機感を覚えています。

――本来なら、朝鮮をはじめとするアジア諸国に対する日本の植民地支配の歴史、加害の問題は、学校教育の中で教えるべきだと思います。もちろん個人が学ぶことは大事ですが、例えば書店に「嫌韓本」が並んでいる中で、事実を正しく伝える本を選ぶことを個人の責任にしていいのか。教育を含めた構造の問題ではないかと疑問を持っています。

熊野 確かに構造の問題もあると思います。ただ一方で、そういった構造、つまり教育のなされない国を作っているのは、紛れもなく自分たち一人ひとりだとも思っています。また、権力者側から構造を変えることはないと思うので、結局構造を変えるのは一人ひとりの市民だと思います。

「教えてもらってない」というなら、きちんと歴史教育を実施するように求める運動はしているか。「メディアで報道していない」というなら、それを検証するような取り組みをしているのか。制度的な問題があるからといって歴史を学ぶ責任を放棄していいのか、と疑問に思います。もちろん自分は、大学で学べるという特権を持つ立場にあります。だからこそ、学び始めた人から声を上げるべきだし、すべての人が学ぶことのできる社会にしないといけないと思っています。
(小島かほり)

※1 水俣病当事者や関係者の聞き取りなどをまとめたもの。第5巻では、日窒コンツェルンの朝鮮進出に伴い、当時植民地であった朝鮮半島での被害、差別などの詳細が書かれている。

※2 8月15日は日本にとっては終戦記念日だが、朝鮮にとっては「植民地支配からの解放」の記念日となる。光復節と呼ばれ、近年ではSNSで言及する人も多い。

※3 「従軍慰安婦」について「誤解を招く恐れがある」とする答弁書を政府が閣議決定したことを受け、中高の教科書を発行する出版社が「従軍」の文字を削除し、文部科学省が承認した。

▼後編はこちら▼

※当記事は10月3日14時公開の内容に、一部修正を加えています。

【10月3日初出の内容について】

 10月3日配信の「推しの「反日」的な言動に抵抗感があるのは、なぜ? K-POP・韓流ファンは避けられない『日韓のモヤモヤ』」(現在は、「推しの「政治」的な言動に抵抗感があるのは、なぜ? K-POP・韓流ファンは避けられない『日韓のモヤモヤ』」に変更)インタビュー記事において、タイトルに「反日」、公式Twitterの記事告知ツイートに「#反日」というハッシュタグが入ったうえで、メイン画像およびサムネイルに音楽グループ・BTSの写真を使用したことについて、タイトル等の変更に至った経緯について説明いたします。

 タイトルについては、「反日」という言葉に戸惑うK-POPファンや若い世代の方にこそ、本稿を読んでほしいという気持ちがあり、あえてタイトルに用いました。強いワードではあるので、波紋を呼びかねないものではありますが、内容を読めば理解してもらえるという原稿への強い信頼感もありました。

 また、本稿における問題提起を広く投げかける上でK-POPや韓国エンタメ文化を表象するものを画像に用いたいと思い、BTSが最もアイコニックな存在だと認識し、彼らの画像をメインとサムネイルに使用しました。

 ハッシュタグについては、Twitterの公式アカウントが入稿システムと連動しているため、タイトルや本文などから自動生成されるもので、「反日」というタグがついていることを見落としてしまいました。

 併せて、Twitterでは画像・タグ・タイトルだけが表示されることを意識していなかったため、まるでBTS=反日のような見え方になっていると公開後に気付いた次第です。その見え方は編集部として不本意であり、取材にご協力いただいた方々の意図とも異なるため、タイトルと画像を差し替え、タグを消去した形で再度ツイートしました。
 
 異文化を取りあげる際にすべき配慮を欠き、「韓国文化の消費」への警告に主眼をおいた記事ながら、BTSの画像をメインに使うことによってそれをなぞる格好になったことをお詫びします。今後は、より一層の注意を払っていきます。

 また本稿へのご意見・質問は、『「日韓」のモヤモヤと大学生の私』の著者ではなく、サイゾーウーマン編集部にお寄せいただくよう、お願いいたします。

 

最終更新:2021/10/05 21:02
「日韓」のモヤモヤと大学生のわたし
このモヤモヤを晴らして、ちゃんと付き合いたいから
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