オンナ万引きGメン日誌

野球カード欲しさに万引きを繰り返した児童……やるせない犯行動機とは?

2021/09/25 16:00
澄江(保安員)

「あれ!? あの子、なんだろう……」野球帽を目深にかぶり現れた児童

 当日の現場は、東京の下町にある住宅街の一角に位置するスーパーT。コンビニを2回りほど大きくしたくらいの売場を有する地域密着型のオーナー店舗で、定期的にスポット契約を頂いているクライアントです。開店直前、青果の品出しに勤しむ顔馴染みの社長さんに挨拶をすると、慣れた口調で歓迎されました。どことなく往年の坂上二郎さんに似た柔和な雰囲気を持つお方です。

「おう、ご苦労さんです。今日は、何時まで?」
「開店からですので、18時までお邪魔致します。最近は、いかがでございますか?」
「小さい店だからさ。一度にたくさん持っていく人は見ないけど、様子がおかしいのは、ちょこちょこ来てるよ。ま、注意してみて」

 変な話に聞こえるかもしれませんが、一度に盗まれる品数が少ないほど、摘発の難易度は高まります。たったひとつの商品を盗む犯行の一部始終を明確に現認することは至難で、それを実現するには、いち早く不審者の来店を察知し、その行動を見守るほかないのです。その一方、入口の自動ドアが開くと同時に犯行に至る確信が得られることも珍しくありません。そうした人の多くは、その外見や行動、雰囲気などから犯意が滲み出ており、自然と目を奪われるものなのです。開店まもなくから出入口を見渡せる位置に陣取り、自分の気配を極力殺しながら入店チェックを始めた私は、ちらほらと入ってくるお客さんひとりひとりの様子を確認していきます。

(あれ!? あの子、なんだろう……)

 午後3時を過ぎた頃、小学3~4年生くらいにみえる少年が、ひとりで店に入ってきました。野球帽を深めに被っていることもあってか、顎を上げて周囲を見回すような視線が不自然で怪しく、発見すると同時に目が離せない気持ちになったのです。

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