[女性誌レビュー]「婦人公論」2021年8月24日号

「婦人公論」怪奇特集がアツい! オカルト界の重鎮・室井滋が語るヤバイ部屋の見分け方とは……? 

2021/08/22 18:00
島本有紀子(ライター)

ベテランオカルト女優・室井滋が語る、ヤバイ部屋は〇〇臭い

 続いては幼いころから不思議な出来事に遭遇しやすいという女優・室井滋のインタビュー「お稲荷様に呼ばれてずっとお祀りする覚悟を決めた」。室井といえば、心霊体験を中心につづったエッセイ「あなたが怖い」(文春文庫)を出していたり、オカルト好きの間でよく知られた都市伝説「偽の警察官」を生み出していたりと、この界隈のベテランといっていい存在。

  今回のインタビューでは、お稲荷様を祀る土地に引っ越した不思議な縁や、ロケ先で体験した恐怖体験などを語っています。室井いわく、地方ロケでの宿では「薄気味悪い部屋」にあたることもあるとか。「私の場合、そのような部屋に入ったとたん、鉄錆を舐めさせられたような感覚が唾液腺から出てくる」と心霊現象の予兆を語ります。

 ここで注目なのが「鉄錆」というワード。実は、先に取り上げた読者体験手記の中の、人の死の臭いがわかるという読者も実は、翌日死ぬ人からは「錆臭さ」を感じると書いているのです。

 信じやすい筆者は、死後の世界のものって錆臭いのか!? とインプットされてしまいました。

怪談のプロが説く「あの世」とは……

 こういった怪奇現象について、プロ目線で見解を寄せてくれているのが、実話系ホラーを得意とする作家・川奈まり子氏です。5,000件以上の怪談を取材し、自らも数々の不思議な体験をしている川奈氏。

 インタビュー「亡くなった方の魂が生きる者にかかわろうとする」では、「いわゆる『あの世』を信じ込んでいるわけではありません。『そういうものがあるとされている』と知識として捉えています」と冷静に語り、実際に心霊現象を目の当たりにした際には、「もしかすると『あの世』と『この世』の境には、本当に三途の川みたいなものが横たわっているのかもしれないと、柔軟に考えることにしています」としています。川奈氏の考えでは、その「境界線」の向こうから、亡くなった方たちが生きている側に「かかわろうとすることがあるかもしれない」とのことでした。

 もう一つの世界を否定するのではなく知識として取り入れ、説明のつかない現象は正常バイアスにとらわれず柔軟に、あるがまま受け入れる――。怪談だけでなく、今の時代に必要な考え方であるような気がし、陰謀論などにハマる人々にも読んでほしいインタビューです。

 いやしかし、「死後の世界=錆臭い」問題についても、川奈氏の意見を聞いてみたかったです。今号のおかげで、これからは錆臭さを感じるたびにびくびくすることになる読者も多いのではないでしょうか。

島本有紀子(ライター)

島本有紀子(ライター)

女性ファッション誌ウォッチャー。ファッションページから読み物ページまでチェックし、その女性誌の特性や読者像を想像するのが趣味。サイゾーウーマンでは、「ar」(主婦と生活社)と「Domani」(小学館)レビューを担当していた。

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最終更新:2021/08/22 18:00
婦人公論 2021年 8/24号 [雑誌]
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