仁科友里の「女のための有名人深読み週報」

『ゴゴスマ』を成功に導いた石井亮次アナ、「天狗になっていない」アピールの危険度とは? 視聴者の共感を得る“今どきの謙遜”

2021/08/12 21:00
仁科友里(ライター)

妻を「お姉ちゃん」と呼ぶ石井亮次アナに思うこと

 『ホンマでっか!?TV』で、出演者のフリーアナウンサーの配偶者について話が及んだ時のこと。司会を務める加藤綾子アナの夫は、年商2000億円といわれる実業家で、元テレビ朝日・竹内由恵アナの夫は医師、元NHKの神田愛花アナの夫は売れっ子お笑い芸人のバナナマン・日村勇紀である。経歴や聞こえが華やかな職業の配偶者を持っている人が多い中、石井アナは、自分の妻を「喫茶店のお姉ちゃん」と言って笑いを取っていた。 
 
 その昔、ビートたけしや明石家さんまがテレビでよく「飲み屋のお姉ちゃん」という言い方をしていたが、血縁関係のない若い女性を男性が「お姉ちゃん」呼ぶことはある。しかし、あまり相手に敬意を払っていないというか、相手を「ちょっと下に見ている」ニュアンスが含まれていることは否めないだろう。 
 
 前述の通り、石井アナは「天狗になっていない」アピールに過剰なまでに心をくだいている人だから、あえて「お姉ちゃん」という言い方をして、視聴者から共感を得ようとしたのかもしれない。しかし、今の「自分中心」で「私と一緒」を重視する視聴者は、「私だったら、そういう言い方をされたらいやだ」と、石井アナの妻でもないのにそっぽを向く可能性があるのだ。 
 
 一昔前、夫が妻や子どもを「愚妻」や「豚児」とへり下った言い換えをすることがあったが、自分のことは下げても、家族のことは決して下げないのが今どきの謙遜ではないかと思う。特に全国ネットの番組で、いろいろな属性の人が見ているテレビでは、「自分の妻を下げることは、女性視聴者全体を下げること」くらいに捉えたほうがいいのかもしれない。 
 
 「女性の気持ちをつかめ」というのは人気商売でよく言われることだが、これは簡単なことではない。仕事のできる人の謙遜を「デキた人」と取る人もいれば、嫌みだと思う人もいるし、誰を下げるかによって印象も変わる。そのあたりの塩梅が視聴率のキモになる難しい時代だと思うが、『ゴゴスマ』を成功に導いた石井アナはフリー転身後も活躍できるかどうか、気になるところだ。

仁科友里(ライター)

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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Twitter:@_nishinayuri

最終更新:2021/08/12 21:00
こんにちは、ゴゴスマの石井です
これほど「したたか」という言葉が似合う人もいないね
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