【連載】わが子から引き離された母たち

「これは連れ去りだ!!」不倫夫が警察官を連れて「息子を返せ」と激高! 子連れ別居した妻が「子どもと離れ離れ」になった理由

2021/06/05 16:00
西牟田靖

 『子どもを連れて、逃げました。』(晶文社)で、子どもを連れて夫と別れたシングルマザーの声を集めた西牟田靖が、子どもと会えなくなってしまった母親の声を聞くシリーズ「わが子から引き離された母たち」。

 おなかを痛めて産んだわが子と生き別れになる――という目に遭った女性たちがいる。離婚後、親権を得る女性が9割となった現代においてもだ。離婚件数が多くなり、むしろ増えているのかもしれない。わずかな再会のとき、母親たちは何を思うのか? そもそもなぜ別れたのか? わが子と再会できているのか? 何を望みにして生きているのか?

第3回 久保田美樹さん(仮名・37)の話(後編)

前編はこちら

「息子と名古屋の実家に帰って、1年間暮らしました。ところが、調停の結果、息子は夫の元へ行くことが決まり、離ればなれ。今は、息子に毎日弁当を届けられるよう、近くに引っ越そうと思っています」

 久保田美樹さん(仮名・37)は、つらい話なのに、気丈な様子で、明るく言った。彼女はなぜ、息子と離ればなれになったのか? そもそもなぜ、実家へ連れ去ったのか? 後編は、子連れ別居を経て、一転、息子と別れ、ひとりきりになった経緯、そして、ひとりの女性として立ち直るまでを記す。明るく話す彼女の夢とは何なのか?

実家に帰ったものの、夫が警察官を伴って現れる

――14年の2月、小学4年生の息子さんを連れて、名古屋の実家に帰ってからのことを聞かせてください。

 母と下の妹が住んでいる実家に身を寄せました。母は喜んでくれたんですが、下の妹と息子がぶつかってしまいました。妹は息子に対して、「なんで私が我慢しなきゃならないのよ!」って不満をぶつけてしまって。そんなわけで、家の中でもあまり安心できなかった。

――いきなり2人引っ越してきたら、狭くなるので、親族といってももめるでしょうね。美樹さんは、どうだったんですか?

 名古屋に帰ってきたとき、私はかなり精神的に参っていました。働くことができず、ずっと家で過ごしていました。病院に行って診てもらえばよかったんですが、そんな気にならなくて、ずっと実家で休んでいました。

――自宅には、どのぐらいいたんですか?

 半年です。すぐに息子の転校手続きをして、新学期から名古屋の小学校に通わせていました。

――ということは、東京に戻ってよりを戻すつもりは、もはやなかったということですね。

 はい。私自身が子どもと離れるつもりがまったくなかったし、私ひとりだけで実家に帰るということは絶対にしたくなかったんです。それに尽きます。私ひとりだけで家を出たら、もう二度と子どもと会えなくなるって思っていたんです。周りの人たちからも「今、手を離したら、一生会えないよ」って言われていましたし。

――なるほど。では、子どもと会えなくなった夫は、どうしたんですか?

 春休みが終わって1カ月ほどがたったゴールデンウィークの時期に、警察官を伴ってやってきて、「これは連れ去りだ!! いつ息子を返してくれるんだ!!」と言って、すごく怒っていました。

――子どもを連れていかれた男性のつらさ、僕自身は共感します。

女のことがバレて、両家で話し合いになったんです。なのに、私の人格がどうとか、話をすり替えて正当化して、私だけ家を追い出して、子どもと引き離そうとしたんですよ。

――なるほど……。それで、その後は?

 扉越しに警察官の方と、「これからどうするのか」という話をしました。私からは夫に、「ランドセルを送ってください」と伝えましたね。まあ警察の人がいたので、私も冷静に話してたんですけど。それからしばらくして、調停を起こされました。

子どもを連れて、逃げました。
夢が叶いますように
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