『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』コロナ禍のタクシードライバーと乗客たち「東京、タクシー物語。前編 ~コロナとシングルマザーの運転手~」

2021/05/10 17:47
石徹白未亜(ライター)

日曜昼のドキュメント『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)。5月9日の放送は「東京、タクシー物語。前編 ~コロナとシングルマザーの運転手~」。

『ザ・ノンフィクション』コロナ禍のタクシードライバーと乗客たち「東京、タクシー物語。前編 ~コロナとシングルマザーの運転手~」の画像1
『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)公式サイトより

あらすじ

 45歳のシングルマザー、恭子は3年前から東京の葵交通でタクシー運転手として働いている。同社の約150人のドライバーの中で、取材を始めた2020年秋時点で女性は恭子一人だ。もともと恭子は故郷、茨城の映画館で長年働いていたのだが、娘のこころが2歳のときに離婚。娘の将来を思い、もっと稼げる仕事をと、40歳を過ぎてから東京でタクシー運転手へと転身する。

 仕事は午後1時から翌朝9時までと深夜乗務が基本となり、タクシー会社が運営する保育園に娘を預けながら、会社が借り上げた部屋に69歳の母と3人で暮らしている。休憩時間中、こころとスマホでビデオ通話をする時間を心の支えに、恭子はハンドルを握る。

 しかし、20年春から感染が拡大した新型コロナウイルスによる社会の変化が、恭子一家の生活も一変させてしまう。度重なる緊急事態宣言で街からは人が消え、飲食店の営業は都からの時短要請が入り、テレワークにより通勤者も減りと、タクシー運転手にとって頼みの綱である深夜の乗客が激減してしまう。

 タクシー運転手は給料における歩合の割合が高く、コロナ以前の社会情勢に基づいていたのであろう求人広告では「月収40万円以上も可能です」と記されていたが、20年秋において恭子の月収は10万円超という。娘、母と暮らし家計を支える立場としては、非常に厳しい状況が続く。日頃は渋谷を回っていた恭子だったが、背に腹は代えられず、泥酔客が多くて苦手な深夜の歌舞伎町も回るようになる。

 年末になると感染がさらに広がり、通常なら大勢の人が行き交う渋谷のスクランブル交差点でさえ人はまばらだった。人員整理が始まったタクシー会社などもある中で、葵交通、田中秀和社長は特別見舞金として5万円を社員に振る舞う。恭子はこころにクリスマスプレゼントとしてゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」を贈り、おせちを家族で食べ、初詣に行くなど一息つく。

 しかし、コロナの状況はその後さらに悪化の一途をたどっていく。恭子のタクシーに乗った赤坂のホステスは、「お客さんはだいぶ減りました。人気店だったんです。去年の今頃は(お客さんの)待ちが出るくらい。の人気店だった。(今は)すごくすごく暇です」と話し、またクラブなどで働いているのであろう20代の女性3人組は「接待の領収書系の人は『(領収書が)切れない』って言ってこなくなった。本当のお金持ちしか来なくなったよね」と話す。

 たまたま乗車した吉本興業の芸人、西村真二(コットン)は「『(コロナで)諦めがついた』って言う芸人もいっぱいいて、これを機に辞める芸人もいますね」と話した。

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