【連載】堀江宏樹に聞く! 日本の“アウト”皇室史!!

皇室に起こった“婚約破棄”騒動、信じられない「ムチャな理由」! 宮様のワガママで大波乱

2021/05/01 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

「なんとなくイヤになった」だけで結婚をキャンセル

 しかも、それは根も葉もないうわさにすぎませんでした。うわさの出どころの女性に確かめると「私はそんなことは言った覚えはない!」と否定されてしまいます。「最初はすごく良いと思っていたけど、なんとなくイヤになった」という「だけ」で、朝融王は菊子さんとは結婚したくなくなったらしいのですが、一度口にしてしまったことは、押し通すという困ったお人柄だったようです。

――そんなムチャを婚約者から言われ、菊子さんはどうなさったのでしょう。

堀江 酒井家はこの辺りの資料を公開していません。ちなみに……酒井さんは、この事件の後、前田利為(まえだ・としなり)侯爵の後妻となるわけですが、侯爵との間に授かった娘・美意子さんに語り聞かせた逸話があるのです。ほとんど歴史家の間では取り上げられないのですが、これがすごいんですね。

 風貌からのあだ名みたいですが、「唐獅子(からじし)」……つまり、ライオンと呼ばれていた侍女が久邇宮家におり、朝融王と菊子さんの結婚に猛反対。いろいろと手練手管を使って最終的に破談に導いたのはこの女の暗躍だった、と。

――ええっ、本当なんでしょうか。

堀江 菊子さんが愛娘である美意子さんに創作して語った、一種のおとぎ話ではあったのかな、とは思います。ただ、約束どおり、結婚してもらわないと困る! 婚約解消などされたら娘にキズが付く! と菊子さんの父・酒井伯爵が猛主張した背景には、菊子さんの朝融王への好意が少なからず反映されていたのかな……とも思います。

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