『おちょやん』解説

『おちょやん』杉咲花演じる千代の“鬱展開”は史実よりマシ!? ドラマより救いがない夫・渋谷の外道っぷり

2021/04/24 17:00
堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

「役者は生活破たん者であったほうが良い」という戯言

 浪花は渋谷から「お前が一番大事で、一番頼りにしている(だから無理をかけてすまん)」と言われ、それを信じようとしていたのだと思われます。「よくだました」の後に、「よくぶってくださいました」、つまり手を上げられていたとも浪花は自伝に書いていますから。

 しかし、渋谷は浪花ではなく、九重京子を最終的に選んだ、ということですね。ちなみに渋谷にいわせれば、「極論すれば喜劇役者と喜劇作者は生活破たん者であったほうが良いとまで思っている」(日経新聞「私の履歴書」)のだそうです。

 「生活破たん者」とまではいいませんが、そして苦労を芸のコヤシにするという考え方は今でもありますが、渋谷天外の外道っぷりには、ちょっと納得しづらいものがありますよね。

▼『おちょやん』解説▼

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

堀江宏樹(作家・歴史エッセイスト)

1977年、大阪府生まれ。作家・歴史エッセイスト。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒業。日本・世界を問わず歴史のおもしろさを拾い上げる作風で幅広いファン層をもつ。著書に『偉人の年収』(イースト・プレス)、『眠れなくなるほど怖い世界史』(三笠書房)など。最新刊は『隠されていた不都合な世界史』(三笠書房)。

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Twitter:@horiehiroki

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最終更新:2021/04/24 17:00
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