海外セレブコラム【後編】

ブリトニー・スピアーズにまつわる騒動を振り返る【前編】――大ブレークから転落、「精神的に不安定」なワケ

2021/04/16 21:39
堀川樹里(ライター)

2008年:涙を流しながら「管理されすぎている」

 1月3日、「裁判所が指定した人物」の立ち会いのもと、子どもたちと自宅で面会していたブリトニーが、部屋に鍵をかけ、ジェイデンと2人で立てこもるという行動に出る。自分の子どもと少しでも長く一緒にいたいという強い気持ちに駆られての行動だったようなのだが、子どもたちを迎えに来たケヴィンのセキュリティは、「子どもが人質にとられている」「子どもに危害を加えるかもしれない」と警察に通報。救急車が呼ばれ、ブリトニーは病院に搬送され、精神鑑定を受けることになった。

 彼女が措置入院した病院には、8カ月間余り会っていなかった父親ジェイミーがやって来た。そして、その数日後、ルー・テイラーというビジネス・マネジャーが父親に接触し、後見人制度の適用を申請するようにアドバイスした。

 カルバリーチャペルというアンチLGBTQ教会の牧師ロバート・テイラーを夫に持つルーは、敬虔なクリスチャンであることを武器に業界で活動。ドラッグとアルコールに溺れていたリンジー・ローハンを後見人制度下に置こうとして失敗したことでも知られ、長年、薬物依存問題を抱えていたミュージシャンで女優のコートニー・ラブも、「ルーに騙され、資産を管理されそうになった」とTwitterで暴露している。

 2月、父親ジェイミーは、精神的に不安定なことを理由に、一時的にブリトニーを後見人制度の下に置きたいと裁判所に申請。前年に起きた数々のスキャンダルも影響したのだろう。裁判所は、あっさりとこれを認めた。

 父親は、続けて「ブリトニーを支えていたサムが、彼女に悪い影響を与えている」とし、裁判所に接近禁止令を申請。「薬漬けにした」「ブリトニーを支配している」と主張し、裁判所はこれも認めた。この接近禁止令は、この年の7月、サムがブリトニーとコンタクトを取らないことを条件に取り下げられた。

 後見人になった父親ジェイミーは、「ブリトニーの資産管理」「ブリトニーを24時間監視」「ブリトニー家の鍵の交換」「ブリトニーの治療内容の確認」などを行える権利が与えられた。ブリトニーの弁護士は後見人制度の適用を中止するよう求めたが、父親側は、「娘は精神的に不安定。弁護士を雇い、打ち合わせを行うなどという能力すらない」と主張。裁判長は父親の主張を認めた。

 ブリトニーは抵抗しようとするが、「親権問題で不利になる」「子どもたちに会えなくなる」と父親に脅され、断念。後見人制度下に置かれたことで、電話の使用、手紙のやりとり、車の運転など、自由に行動する権利を剥奪された。親権裁判に参加することさえできなくなり、後見人である父親立ち会いの下でしか、子どもたちと面会できなくなってしまった。

 その後、父親の信頼していたラリーがマネジャーに復活し、ブリトニーはメルトダウンした直後だというのに、休むことなくレコーディングを開始。人気コメディ『ママと恋に落ちるまで』にゲスト出演し、11月には6作目となるアルバム『サーカス』をリリースした。

 08年11月末、米MTVで、メルトダウンから復活したことをアピールするためのドキュメンタリー番組『Britney: For the Record』が放送された。ブリトニーは、「私は制御不能(out of control)なんじゃない。管理されすぎている(too in control)のよ」「刑務所だって懲役が終われば出られる。でも私は違う」「私にとってのセラピーはアート。ダンスすることがセラピーになるの」「ハッピーな人でいるようにしている。私にできるのは、うまくやっていくこと」など、後見人制度に関するものとみられる発言を、涙を流しながら繰り返して、ファンに大きな衝撃を与えた。

 年末、『サーカス』を引っ提げたワールドツアーを翌09年に開催することが決定。これに伴い、後見人も忙しくなるとして、裁判所は父親の後見人としての報酬を月1万ドル(約108万円)から1万6,125ドル(約175万円)に。弁護士らの報酬もアップすることを認めた。

(後編につづく)

堀川樹里(ライター)

堀川樹里(ライター)

6歳で『空飛ぶ鉄腕美女ワンダーウーマン』にハマった筋金入りの海外ドラマ・ジャンキー。現在、フリーランスライターとして海外ドラマを中心に海外エンターテイメントに関する記事を公式サイトや雑誌等で執筆、翻訳。海外在住歴25年以上。

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最終更新:2021/04/16 21:39
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