仁科友里「女のための有名人深読み週報」

渡辺直美を「わきまえた女」だと思っていた!? 佐々木宏氏、ブタの格好で「チャーミングに見える」発言の“男尊女卑”

2021/03/18 21:00
仁科友里(ライター)

羨望、嫉妬、嫌悪、共感、慈愛――私たちの心のどこかを刺激する人気芸能人たち。ライター・仁科友里が、そんな有名人の発言にくすぐられる“女心の深層”を暴きます。

<今回の有名人>
「これで彼女がチャーミングに見えると思ったのですが」佐々木宏氏
(「週刊文春」2021年3月25日号、文藝春秋)

 東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長(当時)が、「女性がたくさん入る理事会は時間がかかる」「(大会組織委員会の女性役員7人は)わきまえている」と発言したことが問題視され、辞任に追い込まれたのは2月中旬のこと。差別を許さない、平和の祭典の長として不適切な発言だっただけに、辞任は当然のことだと思うが、森氏を気の毒にも感じている。

 世界経済フォーラムが発表した「ジェンダー・ギャップ指数2020」によると、日本は153国中121位。後ろから数えたほうが早い、ジェンダー後進国、もしくは男尊女卑国家だ。日本では、2018年頃から広がった「#MeToo運動」以降、SNSを中心に、女性差別に関して声を上げようという風潮になってきたが、長い歴史から考えると、それは「ここ最近」の出来事。80代の森氏に、今さらそれを理解せよと言っても、無理だろうと思うからのである。

 森氏がいなくなったから、東京五輪・パラリンピック大会組織委員会が一気に男女平等の方向に向かうと、私は思わない。これだけ長いこと男尊女卑を抱えてきた国なのだから、「森的なもの」はそこかしこに含まれているはずで、それらはゆっくり時間をかけて、けれど決してあきらめずに一つずつ解決していくしかない……と思っていたら、「ニュー森」が現れた。開閉式の演出を指揮する「総合統括責任者」の佐々木宏氏だ。氏は電通出身のCMクリエイターで、66歳。サントリー「BOSS」の「宇宙人ジョーンズ」やソフトバンクの「白戸家」シリーズを手掛けたことで知られている。

 この佐々木氏が、五輪開会式の演出プランとして、タレント・渡辺直美にブタの衣装を着せ、「舌を出して『オリンピッグ』と言わせる」という内容を提案していたこと、また、周囲のスタッフに「ヤバい」と指摘され、却下になっていたことが、「週刊文春」(文藝春秋)の取材でわかった。

 小池百合子都知事ではないが、絶句してしまう。しかし、佐々木氏本人に罪の意識はないようで、「文春」の取材に対し、「これで彼女がチャーミングに見えると思った」と“善意”による提案であったと釈明した。

NAOMI
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