[再掲]インタビュー

『カイジ ファイナルゲーム』実は恐ろしい? 「犯罪と嘘」にまみれた“ギャンブル依存症”の実態

2021/02/12 20:30
石徹白未亜(ライター)
『金曜ロードシネマクラブ』(日本テレビ系)公式サイトより

 2月12日、『金曜ロードシネマクラブ』(日本テレビ系)で、“ギャンブルまんがの金字塔”といわれる『賭博黙示録カイジ』(福本伸行氏、講談社)原作の映画『カイジ ファイナルゲーム』が放送される。

 同作は、友人の保証人になって多額の借金を背負ったカイジが、命をも賭けたさまざまなギャンブルゲームに挑戦し、人生の一発逆転を狙うという作品。カイジは当初、借金返済のためにギャンブルの世界に足を踏み入れた格好だったが、どんどんその魔力に取り憑かれ、すっかりギャンブル依存症のような状態になっていく。あくまでフィクションとしては楽しめる作品ではあるものの、実際には恐ろしい人間の一面を描いているのかもしれない。

 サイゾーウーマンでは、祖父、父、夫、そして自分自身もギャンブル依存症だった公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表・田中紀子氏に、ギャンブル依存の実態について伺うインタビューを行っていた。「依存症」と聞くと、健康を害しているイメージもあるが、ギャンブル依存症の人は「体はピンピンしている」といい、「何の問題もないように見える『普通』の人たちが依存を抱えている」と田中氏。また、ほかの依存症とは異なる点もあるそうだ。

 今回、『カイジ ファイナルゲーム』の放送に際し、ギャンブル依存症とは何かを広く知ってもらうために、同記事を再掲する。
(編集部)


(初出:2020年2月23日)

ギャンブル依存症は「普通」すぎて気付かない――見えにくい「犯罪率の高さ」と「嘘まみれ」の実態

 カジノを含む統合型リゾート(IR)の設置を受け、厚生労働省はギャンブル依存症の治療を4月から公的医療保険の対象とする方針を示した。これにより、「不妊治療は適応外なのに」「花粉症を保険対象にしろ」など、ネット上は意見が紛糾している。しかし、ギャンブル依存症とはそもそもどんな病気なのだろうか? 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表で、『祖父・父・夫がギャンブル依存症!三代目ギャン妻の物語』(高文研)の著書があり、自身も同依存症だった田中紀子氏に、「ギャンブル依存」の実態について聞いた。

そもそもどこからが依存症?

――ギャンブルや、お酒などほかの依存対象でもそうですが、そもそもどこからが「依存症」なんでしょうか?

田中紀子氏(以下、田中) 依存はガンみたいに「ガン細胞が発生しました」ではないですからね。きっぱりとしたボーダーラインがあるわけではないんです。本人の中で、なにか行動するときの優先順位のトップにギャンブルが来ているような状況や、家族や友人や同僚といった、周りの人が困っているのだったら、それはもう依存症といえるのではないでしょうか。

――家族だけでなく、友達や同僚に対しても迷惑をかけるのですか?

田中 ギャンブル依存の場合、友達や同僚からお金を借りまくってしまう人もいます。よくあるのは同僚のロッカーからモノを盗んだり。会社の印紙とか切手を盗んだりとか。経費を水増し請求したり。学生だと友達同士でトラブっちゃったりするんですよ。学生ローンなんて、あまり借りられないですから、友人からお金を借りてしまい、返済できないから顔を合わせづらく、大学にも行けなくなってしまう。そして大学も中退せざるを得なくなる。

――大学生がギャンブル依存になるんですか?

田中 大学生には多いですよ。パチンコは18歳からできますよね。競馬は20歳以上であれば大学生からできます。大学側もギャンブル依存のことには無知なため、どこの大学にも「競馬サークル」があったりしますから。大学生もタレントの出てくるCMを見て、気楽な「レジャー」感覚で足を運ぶんです。

――ギャンブル依存症の人は、国内にどのくらいいるのでしょうか。

田中 厚生労働省による2014年の調査では、ギャンブル依存の有病率は成人男性8.8%、成人女性は1.6%という数値が出ています。男性は約9人に1人。なので、依存当事者はまったく普通のサラリーマンですよ。「ギャンブル依存」と聞くと、特にギャンブルに縁のない人ほど、ホームレスのような人を想像しがちですが、そんなことはなく、何の問題もないように見える「普通」の人たちが依存を抱えて生きているんです。

カイジ ファイナルゲーム
カイジには普通に見えないギャンブル依存症の人が大勢出てくる
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